手を、つないで 〜ふたりの未来〜
1.茉歩



「茉歩」

 全身がドクンと波打った。
 目を開けると、自分の部屋の天井が見える。
 ……夢。
 低めで、響きがあって。いつもの寝不足気味の、少し掠れた声。

 私、中森茉歩がお付き合いしている、松永航さんの声。

 彼は私を『中森さん』と呼んでいる。私は『松永さん』。お付き合いを始める前から変わらない。
 でも、今までに何回か、彼が眠っている時に、寝言で名前を呼ばれた。凄く小さい声で『……まほ……』って。
 きっと、今は準備中なんだと思っている。だから、彼がそう呼んでくれるのを気長に待つつもり。
 そして、私も彼を『航さん』って呼ぶ準備をして……して……練習でも口に出せていない。
 会社でうっかり名前で呼べないし、もし呼んでしまったらと思うといろんな意味で怖いので、まだいいかな、と自分を納得させている。




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