その食べ方が好きなんです
4.食べられたいくらい好き
課長は打ち合わせ室へ入った私を見つめた。あれ、手元に書類がない。おかしい。
「紺野。お前は毎日社食で俺の何を見てる?」
がーん。頭をハンマーで殴りつけられたようなショック。とうとうばれた。
「……あ、あの……課長の食べるところを見ています……」
「……はあ、やっぱりな……」
「あ、あの、別にその、課長が好きとかそういうんじゃ……」
「それはわかってる……食べるところが見たいから誕生日ケーキとか言い出したのか」
「あの、私、男の人で綺麗に食事をしているところを見るのが好きなんです。課長はなんというか、無駄のない箸運び、食べ物の適量をその口内に入れた後、咀嚼するときの頬の感じとか……とにかくパーフェクトなんです。今まで見てきた中で断然一位です!トロフィーを差し上げたいくらいなんです」
「……ぷ、あはは……トロフィーって……」
課長は笑い出した。ああ、久しぶりに見た。この笑顔と笑い声。これも実は断然一位。とはいえない……。さっき、課長が好きなわけじゃないって言っちゃったし。
「紺野、正直に答えてくれ」
「え?」
「山田と俺とどっちが上だ?」
びっくりして、私は立ち上がってしまった。もしかして、山田君を見ていたのがばれた?
「……そ、それはあの、もちろん課長です!」
「今まで、山田を見ていなかった。俺の出張中に何があった?」
課長が立ち上がって私の前に来た。うわわ、どうしよう。
「あの、課長がいなくて見る人がいなくなって、ちょっと探したら山田さんがまあ少し合格点の食べ方だったから、課長と比べていて……もちろん課長が一番ですよ」
「……」
すごく怖い目で見てる。どうして?