その食べ方が好きなんです
 ここ二日、課長を社食で観察しているときに、気づかれたかもしれないと思った。二度ほど一瞬だけ目が合った。すぐに目を反らしたので気づかれていないといいのだけれど。

 課長は周りを見ると、席を立った。そしてついてきなさいと言った。打ち合わせ室へ入った。

 課長は私の前に立つと、心配そうに見つめた。

「紺野。俺に何か言いたいことがあるんだろう?」

 もしかしてばれてない。よかった。ほっと胸をなでおろす。

「紺野。毎日指摘しているミスは大したことじゃない。特に今日は数字の入力ミスだけだった。最初の頃に比べたら大きな進歩だ。この調子ならすぐにできるようになるから気に病むなよ」

「あ、えっと……それは別に気にしてません。というか、相変わらず未熟でご迷惑かけて申し訳ございません」

「いや、本音を言ってくれ。紺野に辞められたら困る。それと明日からは打ち合わせ室でミスを指摘するようにする。皆の前で指摘しないようにする。他に何かあれば言ってほしい」

 それなら言いたいことがあった。思い切って話してみる。

「課長、課の人が誕生日の日はケーキを買ってお祝いしませんか?課内預金、コロナになってから使ってないのでどうでしょう?」

「は?……俺に話したいことってそれ?」

 課長は目を丸くした。

 課長が執務席で何か口にしているところを見たことがない。どうにかして課長の食べるところを見る機会を増やしたいのだ。

「明日、古賀君の誕生日らしいんです。プレゼント寄越せとうるさいので、明日から三時に誕生日はケーキを買ってきて皆でお祝いしませんか?」

「それって……古賀の為か?」

「あ、いいえ。私の為です。それなら課長も席で食べてくれますよね?」

 しまった。つい本音が出た。

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