笑顔の可愛いキミは、俺にとって高嶺の花
 *


 あれから二人で夢中になってゲームをし続けた。
 途中でお菓子を摘んだり、ご飯を買いに行ったりして自由に過ごす時間もあったが、今日は珍しくずっと二人きりだった。

 外は日が沈み始めている。

 そろそろ帰ろうか悩んでいると、不意に目に入った香菜の表情がどこか曇っているような気がした。
 話しかけるか悩む。

「……あー……なんかあったのか?」
「……え?」
 何言ってんだ俺。
 柄にもなく、人の悩みに向き合おうとしている自分に驚く。
 自分のこともまともに判断できている自信がないのに。

「……聞いてくれるの?」
「……聞くことしかできないかもしれないが」
「ふふっ、ありがとう」
 香菜は悲しみを隠すように笑った。

 彼女は椅子に座ったまま、ゆっくりと話し始める。
 
「……山下先輩ね、最初は凄い好きだって言ってくれて。あぁ、この人私のこと好きなんだって思ったの。」
「……俺が見てもそう思うよ」
「ほんと?私、恋とか愛とかよく分からなくて。山下先輩と付き合い始めたのだって好きって言ってくれるから、付き合ったら私もこの人を好きになるのかなって思った」
「……」
 
 知らなかった。
 
 俺はてっきり、香菜も先輩のことを好きなのだと思っていた。
 先輩といる彼女はいつも笑っていたから、無意識にそう思い込んでいた。

「先輩、女友達も多くて。よく遊びに行ってたりするんだよね。ちゃんと私に言って行くんだけど」
「……聞いたとしても、嫌だよな」
「やっぱり。……普通はそうだよね」

 俺の返答に香菜は眉を下げ、複雑に笑う。

「何も感じないの。先輩が誰と遊んでても何をしても気にならない」

 その言葉は淡々としていて、彼女の言いたい意味がよくわかった。


 
「私は……恋をしていないんだって気づいちゃった。」


 
 悲しみを帯びているはずの声はその感情に対して軽い。
 香菜は自分が先輩を好きではないと気づいてしまった。
 複雑な感情になんと言っていいのかわからない。
 俺が言葉に悩んでいると香菜は続けた。
 軽く、なんでもないように彼女は言った。
 
「だから」

「先輩と別れちゃったよ」
 
 
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