笑顔の可愛いキミは、俺にとって高嶺の花
 *
 
 
「凄い人だったね……」
「……あれはやばい」
 
 20分ほどかけて人混みから抜け出した俺たちは静寂を求めて近くの公園へと歩いた。
 その間も花火は夜空に花を咲かせている。

「……亮太は好きな人とかいないの?」
「は?!」
「そんな驚かなくてもいいでしょ」
「急にそんなこと聞かれたら驚くだろ……」

 街灯に照らされてもまだ薄暗い道、なぜか香菜は俺に恋バナを求めてくる。
 俺はなんて返したらいい?

「……いるけど」
「えー?!だれ?!知りたい!だれ!」
「近い近い」
 興奮した彼女は俺にグイグイと近づいてくる。
 俺は自分の理性を守るために香菜と距離を保った。

 答えるより前に、公園にたどり着く。
 香菜は「あーブランコ乗りたい!」と子供のように遊具に飛び乗る。
 そのまま俺の話は流れてしまえばいい。

「で、誰?」

 流れるわけがなかった。


 悩んだ末にちょっと誤魔化しながら伝えてみる。

「笑顔が可愛い女の子」
「え、だれ?」
「内緒です」
「えーーーー」

 ブランコに揺られながら、香菜は頬をぷくーっと膨らませ拗ねたように顔を(しか)める。
 その顔が可愛くて、俺は無意識に微笑んでしまった。

「……いいな」
「ん?」

 香菜は動きを止めて、ブランコに立ったまま。

「恋、してるじゃん」


 可愛い笑顔に俺は目をそらした。



 あの時、好きだと伝えていたら何か変わっていただろうか?

 いや。
 
 今あの時に戻ったとしても、俺はまた同じように目をそらす。



 自分のものにするなんて烏滸(おこ)がましい程。


 キミは俺にとって 高嶺の花 。
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