距離感がおかしい後輩に懐かれているが、特に困ってはいない
第8話 距離感がおかしい後輩VSストーカー
最近、帰り道で人の視線を感じる。
私は何気なく振り返った。
電柱の陰に人影がある。
しかしそれは、私の前に姿を現す気はないらしい。
私がじっと見つめると、ササッと立ち去ってしまう。
そんなことが数日続いていた。
会社の帰り方向と同じで、私がひとりのときに足音だけがついてくる。
明らかに私が目的だと思うのだが……。
(また九段坂くんが見守ってくれてるのかな?)
私はさして気にしていなかった。
翌日、会社までの道のりで九段坂に会う。
「おはようございます! 今日も先輩は顔色がいいですね! 体温は36度くらいでしょうか」
「ありがとう」
褒められているのか、よくわからないが、ひとまず悪いことではなさそうだ。
一緒に隣り合って歩いて会社に向かった。
「先輩、最近物騒ですから気をつけてくださいね? よかったら俺の持ってる防犯グッズ貸しますから」
九段坂がカバンから次々とグッズを取り出す。
催涙スプレー、スタンガン、防犯ブザー……。
彼のカバンは魔法みたいに色んなものが詰め込まれているようだ。
「用心深いんだな」
「今の時代、何が起こるか分かりませんから。準備するに越したことはないんです」
「そうだな。でも」
私は微笑みかけた。
「君がいてくれるから大丈夫だろう?」
「先輩……っ」
九段坂は感極まっているのか、目が潤んでいる。
(でも、こんなに準備しているなら、普通に帰りも一緒に歩けばいいのにな)
不思議に思いながら、九段坂と会社に着いた。
いつも通り、彼と一緒に仕事に精を出す。
九段坂は相変わらず、私の一挙手一投足を観察しており、仕事に集中していなかった。
仕事を終えて帰宅後、コンビニに買い物に行こうと家を出る。
「あ、先輩」
家の近くのカフェから、慌てて九段坂が出てきた。
「こんな時間に外出なんて珍しいですね」
「うん。シャンプー切らしてたの忘れてて」
「では、一緒に行きます」
また隣り合ってコンビニまでの道を歩く。
「あのカフェ、コーヒー美味しいですね」
「気に入ったなら良かった。それにしても、最近見守ってたのはやはり君か」
「え? 何の話ですか?」
「え?」
きょとんとしている九段坂に、私も思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「ここのところ、電柱の陰に……」
「あ、それ俺じゃないです」
「えっ」
――では、あれはいったい?
急に空気が冷えたような、静寂が耳に痛い。
次の瞬間、曲がり角から人影が飛び出してきた。
「時子ちゃん、男がいたなんてひどい!」
「え、誰?」
「時子ちゃんを殺して俺も死ぬんだぁ!」
男の手にはナイフが光っている。
私は声が出なかった。
まずい。
逃げなきゃいけないのに、足がすくんで動かない――。
「――誰が、誰を殺すって?」
その瞬間、九段坂が私を庇うように前に出た。
プシュー! と音がして、男が悲鳴を上げる。
――催涙スプレーだ。
だからあんなに準備していたのか。
「やっぱり、最近先輩を付け回してたのはお前だな」
九段坂の声は硬く冷たかった。
「先輩、警察呼びますね。俺のそばから離れないで」
「あ、ああ」
九段坂は男を取り押さえたまま、スマホで通報する。
警察が駆けつけて、ストーカー男はそのまま逮捕となった。
私は気付いていなかったが、以前からSNSなどを監視していたらしい。
「頼りになる彼氏さんですね」
警察官は微笑みながら敬礼する。
「えへへ、それほどでも……」
「いや、彼氏ではないですね」
私がすぐに否定すると、九段坂は二度見していた。
「……」
「でもありがとう、九段坂くん。助かった」
私の言葉に、九段坂は尻尾でも振りそうなくらい満面の笑みを浮かべる。
先ほどまでの勇ましい姿が嘘のような可愛らしい姿に、思わす笑みがこぼれた。
私は何気なく振り返った。
電柱の陰に人影がある。
しかしそれは、私の前に姿を現す気はないらしい。
私がじっと見つめると、ササッと立ち去ってしまう。
そんなことが数日続いていた。
会社の帰り方向と同じで、私がひとりのときに足音だけがついてくる。
明らかに私が目的だと思うのだが……。
(また九段坂くんが見守ってくれてるのかな?)
私はさして気にしていなかった。
翌日、会社までの道のりで九段坂に会う。
「おはようございます! 今日も先輩は顔色がいいですね! 体温は36度くらいでしょうか」
「ありがとう」
褒められているのか、よくわからないが、ひとまず悪いことではなさそうだ。
一緒に隣り合って歩いて会社に向かった。
「先輩、最近物騒ですから気をつけてくださいね? よかったら俺の持ってる防犯グッズ貸しますから」
九段坂がカバンから次々とグッズを取り出す。
催涙スプレー、スタンガン、防犯ブザー……。
彼のカバンは魔法みたいに色んなものが詰め込まれているようだ。
「用心深いんだな」
「今の時代、何が起こるか分かりませんから。準備するに越したことはないんです」
「そうだな。でも」
私は微笑みかけた。
「君がいてくれるから大丈夫だろう?」
「先輩……っ」
九段坂は感極まっているのか、目が潤んでいる。
(でも、こんなに準備しているなら、普通に帰りも一緒に歩けばいいのにな)
不思議に思いながら、九段坂と会社に着いた。
いつも通り、彼と一緒に仕事に精を出す。
九段坂は相変わらず、私の一挙手一投足を観察しており、仕事に集中していなかった。
仕事を終えて帰宅後、コンビニに買い物に行こうと家を出る。
「あ、先輩」
家の近くのカフェから、慌てて九段坂が出てきた。
「こんな時間に外出なんて珍しいですね」
「うん。シャンプー切らしてたの忘れてて」
「では、一緒に行きます」
また隣り合ってコンビニまでの道を歩く。
「あのカフェ、コーヒー美味しいですね」
「気に入ったなら良かった。それにしても、最近見守ってたのはやはり君か」
「え? 何の話ですか?」
「え?」
きょとんとしている九段坂に、私も思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「ここのところ、電柱の陰に……」
「あ、それ俺じゃないです」
「えっ」
――では、あれはいったい?
急に空気が冷えたような、静寂が耳に痛い。
次の瞬間、曲がり角から人影が飛び出してきた。
「時子ちゃん、男がいたなんてひどい!」
「え、誰?」
「時子ちゃんを殺して俺も死ぬんだぁ!」
男の手にはナイフが光っている。
私は声が出なかった。
まずい。
逃げなきゃいけないのに、足がすくんで動かない――。
「――誰が、誰を殺すって?」
その瞬間、九段坂が私を庇うように前に出た。
プシュー! と音がして、男が悲鳴を上げる。
――催涙スプレーだ。
だからあんなに準備していたのか。
「やっぱり、最近先輩を付け回してたのはお前だな」
九段坂の声は硬く冷たかった。
「先輩、警察呼びますね。俺のそばから離れないで」
「あ、ああ」
九段坂は男を取り押さえたまま、スマホで通報する。
警察が駆けつけて、ストーカー男はそのまま逮捕となった。
私は気付いていなかったが、以前からSNSなどを監視していたらしい。
「頼りになる彼氏さんですね」
警察官は微笑みながら敬礼する。
「えへへ、それほどでも……」
「いや、彼氏ではないですね」
私がすぐに否定すると、九段坂は二度見していた。
「……」
「でもありがとう、九段坂くん。助かった」
私の言葉に、九段坂は尻尾でも振りそうなくらい満面の笑みを浮かべる。
先ほどまでの勇ましい姿が嘘のような可愛らしい姿に、思わす笑みがこぼれた。