距離感がおかしい後輩に懐かれているが、特に困ってはいない
第9話 距離感がおかしい後輩が看病してくれた件
「ゲホッ……」
――自宅のベッド。
私は身体のだるさで起き上がれない。
咳と熱っぽい感じ。
完全に風邪。
「会社に連絡しないとな……」
なんとか気力を尽くしてベッドの中でスマホを操作する。
「はい……。すみません、よろしくお願いいたします……」
やるべきことを終えると、ぐったりと脱力した。
「今日はひとまず寝て、回復に専念だな……」
私の意識はあっという間に闇に飲まれる――。
寝落ちして、1時間くらいは経っただろうか。
トントン、と台所で包丁の音がする。
……私、一人暮らしだが。
包丁の音が不意に止まる。
不審に思い、ゆっくりと目を開けた。
「あ、先輩。お目覚めですか?」
「あ……九段坂くん?」
エプロンを身につけた後輩は、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「君、会社は?」
「先輩を放置して仕事なんて手につきません! 早退してきました!」
「真面目に仕事してくれ……」
「でも、先輩の家、食べ物もほとんどストックないでしょう? 俺が来なかったら困ってたんじゃないですか?」
それはそのとおりなので反論できない。
「とりあえず今、おかゆ作ってるので、それまでスポーツドリンクでも飲んで待っててくださいね」
九段坂がドスン! と床にスポーツドリンクを箱で置いた。
その中から1本、ペットボトルを取って渡してくれる。
「あと氷枕と、薬と、加湿器です」
「相変わらず準備がいいな」
床にグッズの山ができており、もはやベッド周りが医療現場。
どこからどうやって持ってきたんだろう……。
九段坂はいつも会社の途中で合流するが、車に乗ってるところは見たことがない。
とはいえ、熱でぼうっとしている私に考える余裕はなかった。
「朝の体温は38.2度でしたね」
「まだ測ってないが」
「顔色と声で」
私、そんなにわかりやすいのかな……。
できあがったおかゆを、九段坂がそっと運んでくる。
「食べられますか? ふーふーしますか?」
「そこまで介護は必要ないよ」
スプーンでおかゆを口に運んだ。
……おいしい。
卵の入った優しい味だ。
なんとか食べられる状態の私を、九段坂は目を細めて見つめる。
「先輩は桃のゼリーと杏仁豆腐がお好きでしたよね」
コンビニ袋の中から数種類のゼリーが出てきた。
私、九段坂に好みを教えたことあったかな……?
「俺も一緒に食べます。楽にしててくださいね」
正直、喉も若干痛かったので、喉越しがいいものは助かる。
食事を終えて落ち着いた頃、九段坂のカバンからはまだまだ看病グッズが出てくるようだった。
「汗拭きタオルもありますからね」
「いや、流石に君に拭かせるわけには……」
「そんな、俺に遠慮なんか……あっ」
九段坂が自分の発言の意味に気付いたのか、サッと顔を赤らめる。
「すっ、すみません! 俺はなんてことを……!」
無意識だったのか……。
「気にしてないよ。でも、汗拭くから後ろ向いててくれるか」
「は、はいっ!」
……そんなハプニングもあったが、九段坂は1日中、献身的に看病してくれた。
そうして、夕方近くになり、おかゆのおかわりを作ってくれた九段坂が、私の寝顔を見守っている。
(九段坂くん、いると安心するな……)
私はだんだんうとうとしてくる。
そんな様子を、九段坂は穴の空くほど、じっと見つめていた。
「熱っぽい先輩……可愛い……」
九段坂もだんだん顔が赤くなっている気がする。
「だがしかし……我慢……弱ってる先輩につけ込むような真似は……」
私は最後まで話を聞くことができず、睡魔に負けてすやすやと眠った。
そして翌日、全快した私は元気に出勤したのである。
「おはよう、九段坂くん」
「おはようございます! 今日は36.5度まで下がってよかったです!」
「なんで私の体温を知ってるんだ君」
――自宅のベッド。
私は身体のだるさで起き上がれない。
咳と熱っぽい感じ。
完全に風邪。
「会社に連絡しないとな……」
なんとか気力を尽くしてベッドの中でスマホを操作する。
「はい……。すみません、よろしくお願いいたします……」
やるべきことを終えると、ぐったりと脱力した。
「今日はひとまず寝て、回復に専念だな……」
私の意識はあっという間に闇に飲まれる――。
寝落ちして、1時間くらいは経っただろうか。
トントン、と台所で包丁の音がする。
……私、一人暮らしだが。
包丁の音が不意に止まる。
不審に思い、ゆっくりと目を開けた。
「あ、先輩。お目覚めですか?」
「あ……九段坂くん?」
エプロンを身につけた後輩は、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
「君、会社は?」
「先輩を放置して仕事なんて手につきません! 早退してきました!」
「真面目に仕事してくれ……」
「でも、先輩の家、食べ物もほとんどストックないでしょう? 俺が来なかったら困ってたんじゃないですか?」
それはそのとおりなので反論できない。
「とりあえず今、おかゆ作ってるので、それまでスポーツドリンクでも飲んで待っててくださいね」
九段坂がドスン! と床にスポーツドリンクを箱で置いた。
その中から1本、ペットボトルを取って渡してくれる。
「あと氷枕と、薬と、加湿器です」
「相変わらず準備がいいな」
床にグッズの山ができており、もはやベッド周りが医療現場。
どこからどうやって持ってきたんだろう……。
九段坂はいつも会社の途中で合流するが、車に乗ってるところは見たことがない。
とはいえ、熱でぼうっとしている私に考える余裕はなかった。
「朝の体温は38.2度でしたね」
「まだ測ってないが」
「顔色と声で」
私、そんなにわかりやすいのかな……。
できあがったおかゆを、九段坂がそっと運んでくる。
「食べられますか? ふーふーしますか?」
「そこまで介護は必要ないよ」
スプーンでおかゆを口に運んだ。
……おいしい。
卵の入った優しい味だ。
なんとか食べられる状態の私を、九段坂は目を細めて見つめる。
「先輩は桃のゼリーと杏仁豆腐がお好きでしたよね」
コンビニ袋の中から数種類のゼリーが出てきた。
私、九段坂に好みを教えたことあったかな……?
「俺も一緒に食べます。楽にしててくださいね」
正直、喉も若干痛かったので、喉越しがいいものは助かる。
食事を終えて落ち着いた頃、九段坂のカバンからはまだまだ看病グッズが出てくるようだった。
「汗拭きタオルもありますからね」
「いや、流石に君に拭かせるわけには……」
「そんな、俺に遠慮なんか……あっ」
九段坂が自分の発言の意味に気付いたのか、サッと顔を赤らめる。
「すっ、すみません! 俺はなんてことを……!」
無意識だったのか……。
「気にしてないよ。でも、汗拭くから後ろ向いててくれるか」
「は、はいっ!」
……そんなハプニングもあったが、九段坂は1日中、献身的に看病してくれた。
そうして、夕方近くになり、おかゆのおかわりを作ってくれた九段坂が、私の寝顔を見守っている。
(九段坂くん、いると安心するな……)
私はだんだんうとうとしてくる。
そんな様子を、九段坂は穴の空くほど、じっと見つめていた。
「熱っぽい先輩……可愛い……」
九段坂もだんだん顔が赤くなっている気がする。
「だがしかし……我慢……弱ってる先輩につけ込むような真似は……」
私は最後まで話を聞くことができず、睡魔に負けてすやすやと眠った。
そして翌日、全快した私は元気に出勤したのである。
「おはよう、九段坂くん」
「おはようございます! 今日は36.5度まで下がってよかったです!」
「なんで私の体温を知ってるんだ君」