悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~
「これは お帰りなさいませ。今、志遠と舞さんとの縁談を一族総意の決定として進めていたところでございます。これで我が家の未来は盤石に」

「総意?黙れ。お前の汚い声を聞くだけでこの家の格が落ちる」

真っ直ぐに部屋の上座へと進み腰を下ろした。
その瞳は数々の修羅場をくぐり抜けてきた本物の権力者のものであり並み居る親族たちを平伏させる力があった。

「志遠の隣に立つべき人間をお前たちのくだらん政治ごっこで決めるなど断じて許さん」

全親族を見回し低く響くような声を響かせた。

「本日、私はある娘に会ってきた」

その言葉に志遠の眉が微かに動いた。

「素性も名前もここで明かすつもりはない。その娘は私の身分も知らず立派な対応をしおった」

春成は少し思い出したように笑みを志遠に向けて集まる親族には傲然と言い放った。

「それだけではない。彼女は見ず知らずの私を一人の人間として温かい手で包み込んでくれたのだ」

日和から手渡されたペンを愛おしそうに指先でなぞった。

「志遠。あの娘はお前の本質を誰よりも深く理解していたぞ。あの娘を閉じ込めようとした理由が私には痛いほど分かった。誰に遠慮することなく己が信じた相手をこの家へ連れてくるがいい。私が全権をもってそれを許す。家柄など我が家には必要ない」

「な、なんですって……!?」

重信が悲鳴のような声を上げ周囲の老人たちが一斉に色めき立った。

「正気ですか!? どこの馬の骨とも知れん小娘のためにこの完璧な結婚を破談にするというのですか!我々一族のこれまでの繁栄を志遠の個人的な感情で無駄にするなど絶対に認められません!」

一族が口々に重信に同調し部屋は罵声と怒号が飛び交う修羅場へと化していった。

「繁栄、だと?」

春成はニヤリと好戦的な笑みを浮かべ一瞬で部屋の怒号を圧殺する。

「お前たちが一族の為などと言う物を掲げながら裏で私腹を肥やし我が家に泥を塗ってきた事実にわしが気づいていないとでも思ったか?」

「っ!? な、何を…」

「重信。お前がスマートIR事業の土地入札に関して裏で建設会社を抱き込み海外のペーパーカンパニーを経由して受け取った裏金の額を1円単位まで読み上げてやろうか?」

重信の顔から一瞬で血の気が引き、目に見えて震え始める。
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