後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 分かりやすい功績をあげるためにマリオンが国境へと旅立ってすぐに、言いがかりにもほどがある理由で開戦。そして、マリオンの行方不明。生死不明の報に居ても立っても居られず、前線へと飛び込んでからの怒涛の日々は記憶に生々しい。

 そして、ようやくマリオンが帰ってきたと思ったら、突然、敵国で内乱勃発である。

 もともと天候不良のために起こった飢饉が原因の戦で、兵糧(ひょうろう)もろくになく敵兵の気力も体力も最底辺だった。
 マリオンが戻ってきた頃には、とりあえずお偉方から文句を言われないために動いていると言わんばかりのやる気のなさで、二~三度斬り結んだと思ったらすぐに兵を引くという体たらくだった。

 どちらもこれ以上負傷者を出したくないと思っているのは明白で、どこを落とし所にするか探っているような日々だったのだ。
 内乱の結果、王が挿げ替わった途端に終戦へと舵を切り、それを反対する声は皆無だったという。

 あれよあれよという間に白旗が掲げられ、速やかに結ばれた仮の停戦条約。
 テーブルに着いたのは、新しい王様の懐刀だという菫色の瞳に金の髪を持つ青年だった。

 どこかで見たような雰囲気の……と首を傾げたマリオンに、青年はにこりと笑って自分の手首を掲げて見せた。
 そこには、自分のものとそっくりな腕輪が結ばれていたという。

 目を丸くするマリオンに青年は、自分はレイラの身内だと語った。
「食べる物が足りず困っているなら、それを満たしてあげる事はできないか?」
 そんなレイラの思いつきから始まって、育ての親へと託された願いは、レイラが思う以上の功績をあげていた。

 善意の施しという名目で隣国で始めた炊き出しと薬の配布は、飢えと疲労にあえいでいた国民の心をがっちりとつかんだ以上に、燻っていた「このままではいけない」という思いに火をつけた。
 結果、内乱が起きるきっかけになり、乗り掛かった舟とばかりに望まれるまま食糧以上の援助を差し伸べ、気がつけば青年は団体の代表として隣国の王の側近に取り立てられていたと言う。

「一族の中では、しがない使い走りだったはずなんですけどね」
 そういって笑う青年の正体は、レイラと共に森で暮らしていた義兄だった。
 正式に国同士の賠償や援助を取り決めるために訪れた新国王一行にも交ざっていて、レイラと再会した暁には、「もっと早く連絡しろ」と拳骨を落とした強者でもある。

 結局、蓋を開けてみれば、国境間の軋轢の緩和を狙ったはずが、戦争終息のきっかけを作っていたレイラとの婚姻を、反対する声が上がることはなかった。
 それほどの大ごとになるとは思っていなかったレイラが、大きすぎる結果に青くなり、周囲に平和に事が収まったのだからと慰められたのは、また別の話である。




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