後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「らえりゅのはっぱ、ぎじゃぎじゃはっぱ。てんたいりゅーはちゅるちゅるはっぱ~」
 調子っぱずれの歌を歌いながら、ご機嫌なレイラがてくてくと歩いていく。
 その後を追いかけながら、サントスは耐え切れず噴き出した。
 突然背後から上がった笑い声に、レイラがきょとんとした顔で振り返る。

「その歌、なんだい?」
「はっぱのうちゃ~」
 いつの間にか手に持っていた葉っぱを見せながら、レイラが答える。

「ラーエルとテンタイルじゃないか!」
 それは前回ババ様と採取に来た時に教わった薬草だった。

「すごいな、レイラ。そういえば、一緒に話を聞いてたけどちゃんと覚えていたんだ」
 自分の横に並んで、ふんふんと真面目な顔で頷いていたのを思い出し、サントスは目を丸くした。

「れーしゅごい?」
「うん!レイラは賢いね」
 頭を撫でられ、レイラがどや顔で胸を張る。

「ちゃちゃちゅはちくちくほしょながい~」
 それから、手に持った葉っぱをぶんぶんと振り回して歩き出しながら、再びご機嫌に歌いだした。

「そっか。薬草の特徴を歌ってるんだ」
 でたらめに歌っていると思っていた歌に耳を澄まして気がついたサントスは、ふと幼い頃の事を思い出した。

「あの人も、なんでも歌にしてたな」
 弟子入りするよりずっとまえ。父親に連れられてババ様を訪ねた時、竈の前で鍋をクルクル混ぜながら、楽しそうに歌っていた姿。窓から刺した陽光に、金色の長い髪がキラキラと光っていた。

「……シチューの歌って言ってたっけ」
 向けられたこちらの気持ちまで明るくなるような、不思議な魅力がある笑顔を浮かべる人で、気がつくとなんでも歌にしているから、みんなから小鳥さんと呼ばれていた。

 なぜか耳に心地よいその歌を聞きたくて、幼いサントスは、今のレイラのように、後を追いかけていたものだ。
 歌と踊りの名手で、みんなに愛されていたその少女は、レイラの母親だった。

「……まあ、レイラの歌はかなり調子っぱずれだけどね」
 楽しそうな歌声は同じだけだけど、音はめちゃくちゃだ。

「まだ小さいし、こんなものかな?……ん?」
 視線の先でレイラがなにか見つけたのかしゃがみ込み、手を伸ばそうとしたもののすでに両手がふさがっているため、どうしようかと困っている。
 その様子が可愛くて、サントスは思わず吹き出しながらも、助けるために歩み寄った。





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