後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

番外編:小鳥の娘も歌が好き

「れーもいく!いっしょ、いくのー!」
 響き渡る幼子の声に、採取かごを背負ったサントスが困ったように眉をひそめた。

「今日は僕一人で森に入るから、レイラを連れていけないんだよ」
 薬師を目指すものにとって、薬草を見分ける事も、自身で採取できることも大切な技能だった。
 薬師見習として弟子入りしたばかりのサントスにとって、森に入り、薬草を採取するのも大切な勉強の場だった。

「や~! シャーにいといくの~」
 しかし、師匠の身内にあたる幼児に駄々をこねられては、無下に振り払う事もできず、サントスは困惑して、救いを求めるように周囲を見渡した。

「連れて行ったらいいじゃないか。今日は森の奥まで行く予定はなかっただろう?」
 ヒシッと足にしがみつかれて動けなくなっているサントスの窮状を見たババ様が、おかしそうに笑いながら声をかける。
 
 それはまさに鶴の一声だった。
 師匠にそう言われてしまえば、弟子のサントスが拒否することは難しい。
 そもそも、サントス自身も笑顔で懐くレイラが可愛くてしょうがないのだ。

(見つけられなかったら、後でこっそりもう一回採取に行けばいいか)
 こっそりと考えながら、サントスは足元にしがみつく幼児をヒョイと抱き上げた。




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