後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
6.ドキドキの再会は薬草をはさんで
約束のその日。
レイラは、指定された場所に1人で向かっていた。
いつもの全身をすっぽりと隠す黒いローブに身を包んだその足取りは、お世辞にも軽やかとは言い難い。
本当は「何かあったら大変」とユリアもついて来ようとしたのだが、どうにかそれは説得して諦めてもらった。
数日がかりの大仕事だったけれど、レイラもここだけは引けないと、半ば強引に納得させたのだ。
尤も、ユリアに諦めのため息をつかせた決め手は「ついて来ても途中でまくからね!」の一言であり、実際には、これっぽっちも納得なんてしていなかったのだが。
出がけに投げかけられた恨めしそうなユリアの視線を思い出して、レイラは深々とため息をついた。
(だってどんな相手かも分からないし。何考えてのことかも、分からないし。そんな所にユリアを連れてなんて行けないよ。私1人なら、最悪、暇な側室様のひとり遊び、で誤魔化せるかもだし………)
一応、レイラなりに無い知恵を絞って考えていたのだ。
自覚などないけれど、これでもレイラは侯爵家の娘だ。
送り出されたあの日より1度も連絡などない、完全見捨てられた存在だとしても、肩書き的には高位貴族の娘である。
多分、その分お目溢しもきっとある…………はず。
そんな事をツラツラと考えながら歩いていれば、慣れた足はあっという間に目的の場所までレイラを運んでいた。
その場所には他に人影もなく。
多分、予定より早く着いてしまったのだろうとレイラは苦笑を浮かべた。
(まぁ、明確な時間指定があったわけでもないし、ね)
カゴの置いてあった木の根元に座り込むと、レイラは荷物の中から編み棒と細い糸を取り出した。
もうすぐユリアの誕生日が近いから、贈り物にショールでも編もうと思っていたのだ。
ここなら、ユリアの目が届くこともないし安心だ。
スルスルと細い糸が編まれ形を作っていく。
可愛らしい花の形が連なって、一枚の布へと変わっていった。
爪の先にも満たない細い糸が自在に形を変えて、やがて人の体を包み込んでしまえるほどの大きな一枚の布に変わる。
自分で作っているものだけど、その工程がいつだって不思議に感じて、レイラはほうっと息をついた。
「美しいな」
そのタイミングを見計らったように、不意に頭上から声が降ってきて、レイラはビクリと体をすくませた。
レイラは、指定された場所に1人で向かっていた。
いつもの全身をすっぽりと隠す黒いローブに身を包んだその足取りは、お世辞にも軽やかとは言い難い。
本当は「何かあったら大変」とユリアもついて来ようとしたのだが、どうにかそれは説得して諦めてもらった。
数日がかりの大仕事だったけれど、レイラもここだけは引けないと、半ば強引に納得させたのだ。
尤も、ユリアに諦めのため息をつかせた決め手は「ついて来ても途中でまくからね!」の一言であり、実際には、これっぽっちも納得なんてしていなかったのだが。
出がけに投げかけられた恨めしそうなユリアの視線を思い出して、レイラは深々とため息をついた。
(だってどんな相手かも分からないし。何考えてのことかも、分からないし。そんな所にユリアを連れてなんて行けないよ。私1人なら、最悪、暇な側室様のひとり遊び、で誤魔化せるかもだし………)
一応、レイラなりに無い知恵を絞って考えていたのだ。
自覚などないけれど、これでもレイラは侯爵家の娘だ。
送り出されたあの日より1度も連絡などない、完全見捨てられた存在だとしても、肩書き的には高位貴族の娘である。
多分、その分お目溢しもきっとある…………はず。
そんな事をツラツラと考えながら歩いていれば、慣れた足はあっという間に目的の場所までレイラを運んでいた。
その場所には他に人影もなく。
多分、予定より早く着いてしまったのだろうとレイラは苦笑を浮かべた。
(まぁ、明確な時間指定があったわけでもないし、ね)
カゴの置いてあった木の根元に座り込むと、レイラは荷物の中から編み棒と細い糸を取り出した。
もうすぐユリアの誕生日が近いから、贈り物にショールでも編もうと思っていたのだ。
ここなら、ユリアの目が届くこともないし安心だ。
スルスルと細い糸が編まれ形を作っていく。
可愛らしい花の形が連なって、一枚の布へと変わっていった。
爪の先にも満たない細い糸が自在に形を変えて、やがて人の体を包み込んでしまえるほどの大きな一枚の布に変わる。
自分で作っているものだけど、その工程がいつだって不思議に感じて、レイラはほうっと息をついた。
「美しいな」
そのタイミングを見計らったように、不意に頭上から声が降ってきて、レイラはビクリと体をすくませた。