後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
 そもそも情報集まるのかしら?と思いながらも、いつもの井戸端恋話の輪に素知らぬ顔で交じり「気になる方を見つけたのだけど、どんな人か知らない?」と水を向けてみたのだ。

「近衞の制服姿で、確か「マリオン」と呼ばれていらっしゃったみたいなのだけど」
 あくまでレイラの名は出さず、自分の事として聞いたユリアに、その場にいたみんなの注目が集まった。
 突然、シンと静まり返った場の空気に、ユリアは首を傾げる。

「みなさん、ご存じないですか?」
 キョトンとした顔で重ねて尋ねるユリアに、ワッと場が沸いたのは次の瞬間だった。

「ユリア、すごい人に目をつけたわね!」
「今まで、話を聞くだけだったから、恋愛なんて興味ないんだと思ってたら、大物狙いだったの?!」
「待って待って。「どんな方?」って聞くくらいだから、知らずに恋しちゃったのよ!」
「え〜〜!それってすごくな〜い?!」

 キャァキャアと頬を赤く染めて大騒ぎするみんなの様子に、ユリアの頬が引きつる。
 どうにも、おかしな反応だ。

「え……と、有名な方、なのですか?」
 少なくとも、ここで「マリオン」の名を聞いたことがなかったユリアは、そういえばそのこと自体が「おかしい」ということにようやく思い至った。

 レイラの語る「マリオン」は若くして近衞に入った将来有望なエリートであり、恋の欲目を抜きにしても若い女性の気を引きそうな容姿をしていた。
 すなわち、ここに集まる女性陣の「格好の的」というやつなのだ。

 なのに……。

 ツッ………と、背中を嫌な汗が伝っていく。
 顔を見合わせるメイド仲間たちの楽しそうに細められた目が、さらにレイラの悪寒を増幅した。
 嫌な予感しかしない。
 どう考えても、厄介ごとの気配だ。

(聞きたくない)

 しかし、心の底からそう思った次の瞬間には、爆弾は投下されていた。



「「「有名よ〜〜。なんてったって我が国の王子様ですもの!!」」」



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