後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「まぁ、そんなわけで下地はあるから、より手を挙げやすくするためにも、マリオンに功績をあげてほしいわけなんだよ」
 頷き合う少しズレた主従に少し呆れながらも、フィリアスはマリオンに視線を投げた。

「そこは考えてある。北の国境がきな臭いらしく今度増兵があるから、そこに王の名代として参加してこようと思っている」
「増兵………ですか?」
 マリオンの言葉に、レイラの目に不安の色がよぎる。
 それをめざとく見つけたマリオンは、安心させるように微笑んだ。

「大丈夫。隣国とは長年睨み合いが続いているが、今まで大きな戦いになったことは無い。ただ、「警戒しているぞ」という形を定期的に見せることが牽制になるから、そのためのものだ」

 もともと豊かな資源を持った国であったが、近隣の国がその資源を狙って戰を仕掛けてくるのを返り討ちしていくうちに領土を広げてきた歴史がある。

 現状、国は大国となり、広がった境界はその分接する国を増やした。
 結果、常にどこかしらで小規模ではあるものの諍いが起こっているのが現状だ。

 ちなみに、レイラの国は同盟国が喧嘩をふっかけたため、渋々手伝ったら見事敗戦の巻き添いを食らったパターンである。

 この国に送り込まれてから細かい経緯を知ったレイラは、思わず故郷の方角に向かって文句を叫んだ。主に、明らかに不利な状況なのに断れなかった弱気な王様に向けて……。

「一年前後、砦に滞在することで、それなりの格好がつくはずだ。時間はかかってしまうが、それでも現状では一番の近道だと思う」
 考えを伝えるようにゆっくりと言葉を紡ぐマリオンに、フィリアスも頷いた。

「それが今のところ、一番の無難かつ安全策だろうと俺も思う。マリオンが王位継承権手放す前だったら、また別の手もあったんだけどね」
 肩をすくめるフィリアスにマリオンが眉を顰めた。

「マリオン…‥殿下は継承権を放棄されたのですか?」
 パチリと目を瞬いてレイラが首を傾げた。
 名前がぎこちなかったのはご愛嬌だ。
 今まで敬称をつけた事がなかったのだから。

「いつも通りで構わない。そもそも放棄している時点で《殿下》はおかしいしな」
 呼びづらそうなレイラに、すかさずマリオンがフォローを入れた。単純に他人行儀な呼び方が嫌だったというのもあるが。

「母上が亡くなった事で、私の立場もさらに弱いものになったからな。元々興味もなかった地位にしがみついて変な嫌がらせを受けるより、サッパリした方がいいと思ったんだ………」

「継承権放棄したところで王子は王子なんだから《殿下》呼びも間違いじゃ無いぞ?」
 コソッと茶化して睨まれたフィリアスが、両手を軽く上げて降参のポーズをしてから笑った。

「まぁ、無い物ねだりをしてもしょうがないし、地道に行こう。目指せ!幸せな結末!!」
 オー!と拳を振り上げるフィリアスに残りの面々は顔を見合わせた後、付き合い程度に小さく拳を上げた。




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