後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
「血の匂いがすると思ったけど、意外と元気そうだな」
ボソリと呟かれた声は小さく聞き取り辛かったが、確かに母国語である事に気づき、フィリアスは一縷の希望を持つ。
「友が怪我をしている。助けて欲しい」
懇願の響きに、目前の男が何か言おうと口を開きかけた時、だった。
「おマエたちを助けて、コチラにナンノ利がアル?」
少し訛りのある低い声が、フィリアスの耳元で囁かれた。
予想外のところから響いた声に、フィリアスの目が驚きに見開かれる。
いつの間に背後に立たれたのか、少しも気づかなかった。
「ウゴクナ」
ピクリと体を震わせたフィリアスの動きを制するように、スッと首元に細身のナイフが添えられた。
「なんでもする。国に戻れば、どんなものでも用意できる。頼む、友を助けてくれ」
「はっ!おマエたちのカネなど、ここではナンノイミもない」
言われた通り、ナイフを突きつけられたまま、フィリアスはもう一度懇願するが、背後からの声はにべもない。
「まぁまぁ、ベック君。素直に自分から出てきてくれたんだし、そんな一方的に切り捨てちゃダメでしょ」
取り付く島もない対応に、フィリアスが唇を噛み締めた時、水を汲んでいた男が、軽い調子で声をかけながら近づいてきた。
「そこに怪我人いるんでしょ?み〜せ〜て」
「もうムシのイキだ」
耳元では嫌そうな声が響くけれど、男は頓着ない様子で、フィリアスの横を通り抜け、茂みへと顔を突っ込んだ。
そのまま、茂みの中へ潜り込んでいく男を横目で見送っていると、フゥ、とため息がつかれた。
「スコシでもヘンナコトしたら、コロス」
スッと喉元に添えられたナイフが引っ込められ、背後の人の気配が消えた。
瞬間、踵を返したフィリアスは、男の後を追い、マリオンの元へと駆け寄った。
そこでは、男が慣れた仕草で意識のないマリオンの顔を覗き込み、瞼を捲り、フィリアスが施した応急処置を解いていた所だった。
「矢尻に毒でも仕込まれたかな?」
振り返った男の目が淡い紫であることに、フィリアスはその時初めて気づいた。
「川を流れてきたおかげで体が冷やされて毒が回るのを防いだみたいだねぇ。その後、抉って血を流したのはいい判断だ」
ニッコリ笑った男が、立ち上がった。
「ベック君、連れて帰るから手伝って」
そうして、立ち尽くすフィリアスの背後に向かって声をかける。
「ナゼ」
明らかに嫌そうな声が、再びフィリアスの背後で響いた。
「イヤァ〜、僕だってこんな明らかに厄介事を背負ってそうな患者、お断りしたいんだけどさぁ」
困ったように男が、ポリポリとこめかみを人差し指で掻いた。
「ではホオッテおけ」
冷たい声に、男はひょいと肩をすくめると、再びマリオンの側にしゃがみ込むと、意識のないマリオンの手を無造作に掴んで掲げてみせた。
「どうも一族の縁者みたいなんだもん。手作りの守り紐着けてる。こんなもの持ってる患者、何もせずに見捨てたら祖霊に祟られちゃうよ」
そこには紫の石が編み込まれた組紐がしっかりと結び付けられていた。
ボソリと呟かれた声は小さく聞き取り辛かったが、確かに母国語である事に気づき、フィリアスは一縷の希望を持つ。
「友が怪我をしている。助けて欲しい」
懇願の響きに、目前の男が何か言おうと口を開きかけた時、だった。
「おマエたちを助けて、コチラにナンノ利がアル?」
少し訛りのある低い声が、フィリアスの耳元で囁かれた。
予想外のところから響いた声に、フィリアスの目が驚きに見開かれる。
いつの間に背後に立たれたのか、少しも気づかなかった。
「ウゴクナ」
ピクリと体を震わせたフィリアスの動きを制するように、スッと首元に細身のナイフが添えられた。
「なんでもする。国に戻れば、どんなものでも用意できる。頼む、友を助けてくれ」
「はっ!おマエたちのカネなど、ここではナンノイミもない」
言われた通り、ナイフを突きつけられたまま、フィリアスはもう一度懇願するが、背後からの声はにべもない。
「まぁまぁ、ベック君。素直に自分から出てきてくれたんだし、そんな一方的に切り捨てちゃダメでしょ」
取り付く島もない対応に、フィリアスが唇を噛み締めた時、水を汲んでいた男が、軽い調子で声をかけながら近づいてきた。
「そこに怪我人いるんでしょ?み〜せ〜て」
「もうムシのイキだ」
耳元では嫌そうな声が響くけれど、男は頓着ない様子で、フィリアスの横を通り抜け、茂みへと顔を突っ込んだ。
そのまま、茂みの中へ潜り込んでいく男を横目で見送っていると、フゥ、とため息がつかれた。
「スコシでもヘンナコトしたら、コロス」
スッと喉元に添えられたナイフが引っ込められ、背後の人の気配が消えた。
瞬間、踵を返したフィリアスは、男の後を追い、マリオンの元へと駆け寄った。
そこでは、男が慣れた仕草で意識のないマリオンの顔を覗き込み、瞼を捲り、フィリアスが施した応急処置を解いていた所だった。
「矢尻に毒でも仕込まれたかな?」
振り返った男の目が淡い紫であることに、フィリアスはその時初めて気づいた。
「川を流れてきたおかげで体が冷やされて毒が回るのを防いだみたいだねぇ。その後、抉って血を流したのはいい判断だ」
ニッコリ笑った男が、立ち上がった。
「ベック君、連れて帰るから手伝って」
そうして、立ち尽くすフィリアスの背後に向かって声をかける。
「ナゼ」
明らかに嫌そうな声が、再びフィリアスの背後で響いた。
「イヤァ〜、僕だってこんな明らかに厄介事を背負ってそうな患者、お断りしたいんだけどさぁ」
困ったように男が、ポリポリとこめかみを人差し指で掻いた。
「ではホオッテおけ」
冷たい声に、男はひょいと肩をすくめると、再びマリオンの側にしゃがみ込むと、意識のないマリオンの手を無造作に掴んで掲げてみせた。
「どうも一族の縁者みたいなんだもん。手作りの守り紐着けてる。こんなもの持ってる患者、何もせずに見捨てたら祖霊に祟られちゃうよ」
そこには紫の石が編み込まれた組紐がしっかりと結び付けられていた。