後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~
フィリアスは、慎重にマリオンの服を脱がせると、矢尻の根元へとその刃を向けた。
「耐えろよ、マリオン」
ふと思いついて、脱がした服の端をその口へと押し込み、ぐったりと脱力した体へとまたがった。
反射で暴れられて、傷を広げるわけにはいかない。
集中するように大きく息をつくと、フィリアスは、矢尻を抉るように刃を突き立てた。
そうして、傷口を広げ、矢を抜き出す。
もう一本の矢も同じように抜くと、溢れる血を止血することなくしばらくそもまま流すに任せる………というか、むしろ助長するように傷口を押して血をあふれさせた。
幸い意識を失ったマリオンが暴れることはなく、しばらくそうして血を流した後、フィリアスは、今度は強く服で傷口を押さえて止血した。さらに、自分の服を引き裂いて作った簡易の包帯で、傷口をぐるりと縛る。
フィリアスは、どれくらい効果があるかは分からないと思いながらも、少しでも体内に入った毒を外に出そうとしたのだった。
「…‥冬じゃなかったのが、せめてもの救いだな………」
フィリアスは小さくつぶやくと、疲れ切った身体を木の幹にもたれかけ、未だ意識の戻らないマリオンの体を引き寄せた。
地面に寝かせるのとどちらがマシだろうと思いながらも、燃えるように熱いのに、ガタガタと震える身体をぎゅっと抱きしめる。
本当なら、火を熾して濡れた服を乾かし身体を温めたい。
だけど、火をつける道具もなく、一から火を熾すには、フィリアスの体も限界だった。
「少し……だけ。きゅーけぃ……」
自分に言い聞かすようにつぶやくと、フィリアスは意識を飛ばした。
けれど、大切にマリオンを抱えた腕から、力が抜けることはなかった。
ジャリッ、と川辺の砂利の鳴る音で、フィリアスは微睡から覚醒した。
明らかに、人の足音、だった。
そっと音がしないように、抱き止めていたマリオンの体を地面に横たえ、軋む体に鞭を打って背後へと隠す。
低木の影から息を潜めつつ、音の鳴る方を睨みつける。
敵か?味方か?
そろりと茂みを掻き分け、目を凝らすと、中肉中背の男性が、こちらに背を向けて水を汲んでいた。
(こんなところに、人が………?)
短刀……というか、ナタのようなものを腰に差しているが、それ以外に武器を持っている様子はない。
体つきも武人という感じでもない。
(どうする……?)
一か八か、助けを求めるか………。
フィリアスは、チラリと背後に寝かせたマリオンを見た。
今は顔の赤みはひいているけれど、顔色は青く、息は細い。
素人目から見ても、悪化しているようにしか見えなかった。
(迷ってる、暇なんてない………か)
フィリアスは覚悟を決めると、ナイフを腰のケースへと戻して、わざとガサガサと音を立てて茂みの中から、姿を現した。
敵意がないことを示すために両掌を肩の位置まで上げ、無手であることをアピールする。
水を汲んでいた男が、手を止めて、ゆっくりと振り返る。
フィリアスの姿を見て、驚いたように大きく見開かれた目が、パチリと1つ瞬いた。
「耐えろよ、マリオン」
ふと思いついて、脱がした服の端をその口へと押し込み、ぐったりと脱力した体へとまたがった。
反射で暴れられて、傷を広げるわけにはいかない。
集中するように大きく息をつくと、フィリアスは、矢尻を抉るように刃を突き立てた。
そうして、傷口を広げ、矢を抜き出す。
もう一本の矢も同じように抜くと、溢れる血を止血することなくしばらくそもまま流すに任せる………というか、むしろ助長するように傷口を押して血をあふれさせた。
幸い意識を失ったマリオンが暴れることはなく、しばらくそうして血を流した後、フィリアスは、今度は強く服で傷口を押さえて止血した。さらに、自分の服を引き裂いて作った簡易の包帯で、傷口をぐるりと縛る。
フィリアスは、どれくらい効果があるかは分からないと思いながらも、少しでも体内に入った毒を外に出そうとしたのだった。
「…‥冬じゃなかったのが、せめてもの救いだな………」
フィリアスは小さくつぶやくと、疲れ切った身体を木の幹にもたれかけ、未だ意識の戻らないマリオンの体を引き寄せた。
地面に寝かせるのとどちらがマシだろうと思いながらも、燃えるように熱いのに、ガタガタと震える身体をぎゅっと抱きしめる。
本当なら、火を熾して濡れた服を乾かし身体を温めたい。
だけど、火をつける道具もなく、一から火を熾すには、フィリアスの体も限界だった。
「少し……だけ。きゅーけぃ……」
自分に言い聞かすようにつぶやくと、フィリアスは意識を飛ばした。
けれど、大切にマリオンを抱えた腕から、力が抜けることはなかった。
ジャリッ、と川辺の砂利の鳴る音で、フィリアスは微睡から覚醒した。
明らかに、人の足音、だった。
そっと音がしないように、抱き止めていたマリオンの体を地面に横たえ、軋む体に鞭を打って背後へと隠す。
低木の影から息を潜めつつ、音の鳴る方を睨みつける。
敵か?味方か?
そろりと茂みを掻き分け、目を凝らすと、中肉中背の男性が、こちらに背を向けて水を汲んでいた。
(こんなところに、人が………?)
短刀……というか、ナタのようなものを腰に差しているが、それ以外に武器を持っている様子はない。
体つきも武人という感じでもない。
(どうする……?)
一か八か、助けを求めるか………。
フィリアスは、チラリと背後に寝かせたマリオンを見た。
今は顔の赤みはひいているけれど、顔色は青く、息は細い。
素人目から見ても、悪化しているようにしか見えなかった。
(迷ってる、暇なんてない………か)
フィリアスは覚悟を決めると、ナイフを腰のケースへと戻して、わざとガサガサと音を立てて茂みの中から、姿を現した。
敵意がないことを示すために両掌を肩の位置まで上げ、無手であることをアピールする。
水を汲んでいた男が、手を止めて、ゆっくりと振り返る。
フィリアスの姿を見て、驚いたように大きく見開かれた目が、パチリと1つ瞬いた。