桜舞う空に、私の初恋がほどけていく。
最終章:桜舞う空に、私の初恋がほどけていく。
中学校の卒業式。
校庭の桜は、まるで私たちの門出を祝うように満開の花を咲かせていた。
式が終わり、教室や廊下が名残惜しそうな喧騒に包まれる中、私は中庭の隅で、一人スマホを見つめていた。
湊に、気持ちを伝えなきゃ。彼女が犬だと知ってから、私の心は決まっていた。だけど、いざとなると足がすくんで動けない。
「おーい、葵。何しけた顔してんだよ」
後ろから声をかけてきたのは、颯太だった。手には丸まった卒業証書を持っている。
そのいつも通りの飾らない笑顔を見て、ふっと緊張が和らいだ。
「颯太……。ううん、ちょっとね」
「湊、探してんの? あいつなら今、体育館の裏に一人でいたぞ。早く行かねーと、他の女子に捕まるぞ」
からかうような口調。だけど、なぜかその瞳は、いつもより少し寂しそうに見えた。
私は胸の奥にあった、ずっと言えなかった「過去」を、今なら笑って話せる気がして口を開いた。
「颯太を探してた」
「え?」
「ねえ、颯太。……私さ、小学校のとき、颯太のことが好きだったんだよ。4年間……」
あの折り紙の飛行機のこと。新種のイカで蛙化したこと。全部、今では愛おしい思い出だ。
「バカだよね」と笑おうとした私を、颯太の真面目な声が遮った。
「……知ってる。お前、俺が鼻に鉛筆突っ込んでから、急に冷たくなったもんな」
颯太は苦笑いして、それから、一歩私に近づいた。その真剣な眼差しに、息が止まる。
「でも、お前は知らないだろ。……俺は小一のあの日から、今日という日まで、ずっとお前が好きだったよ」
心臓がドクン、と跳ねた。冗談なんかじゃない。颯太の瞳には、9年分の重くて、真っ直ぐで、温かい恋心が溢れていた。
言葉を失って立ち尽くす私に、颯太はいつもの悪ガキみたいな笑みを浮かべると、私の背中を優しく、だけど力強くポンと押した。
「ほら、行ってこい! 湊に気持ち、伝えてこい!」
自分の気持ちにケジメをつけて、大好きな人の背中を押した颯太。その特大の優しさに目頭が熱くなる。
「……ありがとう!」
私は何度も頷き、涙を拭って走り出した。ひらひらと舞い散る桜の中を、湊の元へと。
息を切らせて体育館の裏にたどり着くと、そこには桜を見上げる湊の後ろ姿があった。
「湊くん!」
振り返った湊は、私を見た瞬間、いつものように耳まで真っ赤にした。だけど、今日はもう逃げない。
「あのね、湊くん! 私、ずっと湊くんのことが好きでした! 彼女がいるって聞いたけど、気持ちは止められなかったの! それくらい、湊くんのことが大好きです!」
心臓が口から出そうなほどバクバク鳴っている。
湊は目を見開いて硬直していたけれど、やがて顔を覆っていた手をゆっくりと下ろした。その顔は、これまでで一番、トマトみたいに真っ赤だった。
湊は一歩、私との距離を詰めると、少し照れくさそうに、でもしっかりと私の目をのぞき込んだ。
「……知ってる。俺、葵が近くにいると、緊張していつも変な顔になっちゃうから。……でも、やっと言える。今なら」
湊は優しく微笑むと、私の手をそっと握りしめた。
「俺も、葵が好き。ずっと、大好きだよ」
頭上で、桜の花びらが2人を祝福するように舞い踊る。
ほどけた初恋の糸は、今、新しい最高の恋の結び目へと変わった。
校庭の桜は、まるで私たちの門出を祝うように満開の花を咲かせていた。
式が終わり、教室や廊下が名残惜しそうな喧騒に包まれる中、私は中庭の隅で、一人スマホを見つめていた。
湊に、気持ちを伝えなきゃ。彼女が犬だと知ってから、私の心は決まっていた。だけど、いざとなると足がすくんで動けない。
「おーい、葵。何しけた顔してんだよ」
後ろから声をかけてきたのは、颯太だった。手には丸まった卒業証書を持っている。
そのいつも通りの飾らない笑顔を見て、ふっと緊張が和らいだ。
「颯太……。ううん、ちょっとね」
「湊、探してんの? あいつなら今、体育館の裏に一人でいたぞ。早く行かねーと、他の女子に捕まるぞ」
からかうような口調。だけど、なぜかその瞳は、いつもより少し寂しそうに見えた。
私は胸の奥にあった、ずっと言えなかった「過去」を、今なら笑って話せる気がして口を開いた。
「颯太を探してた」
「え?」
「ねえ、颯太。……私さ、小学校のとき、颯太のことが好きだったんだよ。4年間……」
あの折り紙の飛行機のこと。新種のイカで蛙化したこと。全部、今では愛おしい思い出だ。
「バカだよね」と笑おうとした私を、颯太の真面目な声が遮った。
「……知ってる。お前、俺が鼻に鉛筆突っ込んでから、急に冷たくなったもんな」
颯太は苦笑いして、それから、一歩私に近づいた。その真剣な眼差しに、息が止まる。
「でも、お前は知らないだろ。……俺は小一のあの日から、今日という日まで、ずっとお前が好きだったよ」
心臓がドクン、と跳ねた。冗談なんかじゃない。颯太の瞳には、9年分の重くて、真っ直ぐで、温かい恋心が溢れていた。
言葉を失って立ち尽くす私に、颯太はいつもの悪ガキみたいな笑みを浮かべると、私の背中を優しく、だけど力強くポンと押した。
「ほら、行ってこい! 湊に気持ち、伝えてこい!」
自分の気持ちにケジメをつけて、大好きな人の背中を押した颯太。その特大の優しさに目頭が熱くなる。
「……ありがとう!」
私は何度も頷き、涙を拭って走り出した。ひらひらと舞い散る桜の中を、湊の元へと。
息を切らせて体育館の裏にたどり着くと、そこには桜を見上げる湊の後ろ姿があった。
「湊くん!」
振り返った湊は、私を見た瞬間、いつものように耳まで真っ赤にした。だけど、今日はもう逃げない。
「あのね、湊くん! 私、ずっと湊くんのことが好きでした! 彼女がいるって聞いたけど、気持ちは止められなかったの! それくらい、湊くんのことが大好きです!」
心臓が口から出そうなほどバクバク鳴っている。
湊は目を見開いて硬直していたけれど、やがて顔を覆っていた手をゆっくりと下ろした。その顔は、これまでで一番、トマトみたいに真っ赤だった。
湊は一歩、私との距離を詰めると、少し照れくさそうに、でもしっかりと私の目をのぞき込んだ。
「……知ってる。俺、葵が近くにいると、緊張していつも変な顔になっちゃうから。……でも、やっと言える。今なら」
湊は優しく微笑むと、私の手をそっと握りしめた。
「俺も、葵が好き。ずっと、大好きだよ」
頭上で、桜の花びらが2人を祝福するように舞い踊る。
ほどけた初恋の糸は、今、新しい最高の恋の結び目へと変わった。