紫陽花のように、綺麗に咲く君へ。~今日、キミに恋しました~(恋リアの裏側暴露※完全妄想です!!)

②:楽屋の洗礼

「お疲れ様でーす」

ロケ地のペンションに用意された、男子・女子共通の仮設休憩室。
スタッフが去り、完全に身内だけの空間になった瞬間、部屋の空気は「リゾート地のときめき」から「お仕事モードのピリつき」へと一変した。

パイプ椅子に深く腰掛け、すぐさまスマホをタップし始めたのは、現役高校生インフルエンサーの乃愛(のあ)だ。さっきまでカメラの前で「人見知りなんですぅ」とモジモジしていた姿はどこへやら、その指の動きは高速かつ冷徹だった。

「ねえ、宙(そら)くん」

乃愛が、部屋の隅で気怠げにスマホを見ていた人気配信者の宙に声をかける。

「んー? なに?」
「宙くんってさ、今TikTokのフォロワー何万人だっけ? 確か50万人くらい?」

一見、無邪気な質問。しかし、乃愛の目は全く笑っていない。
宙はスマホから目を離さないまま、気だるそうに口角を上げた。

「あー、先週で65万。まあ、YouTubeの登録者も合わせたら100万は超えてるけど。それがどうかした?」
「あ、そうなんだぁ! すごーい」

乃愛はわざとらしくパチパチと手を叩く。だが、すぐに自分のスマホの画面を宙の目の前に突きつけた。

「でも、ウチ、今朝の時点でインスタのフォロワー85万超えたんだよね。今回の『あじ恋』の告知出したら、1時間で3万増えちゃって。やっぱ、文字より画像で魅せるインフルエンサーの方が、今のトレンドじゃん?」

あからさまなフォロワー数でのマウンティング。
「私の方が格上だから、そっちから擦り寄ってきなよね」という暗黙の圧だった。

宙はフッと鼻で笑い、スマホをポケットに収めると、乃愛を値踏みするように見つめ返した。

「へえ、おめでとう。でもさ、それって加工ゴリゴリの静止画だからでしょ? 動画になった瞬間、視聴者に『あれ、写真と違くね?』って言われないように気をつけなよ。実物、結構……いや、なんでもない」
「は……? 何それ、喧嘩売ってんの?」

乃愛の額に青筋が浮かぶ。
カメラの前では「可愛い系の二人」として編集されるであろう彼らは、裏では早くも主導権を握るためのマウンティング合戦を始めていた。

そんな二人の一触即発の空気を、他のメンバーたちは冷ややかに、あるいは関心なさそうに眺めている。

舞台俳優の拓海は鏡の前で自分の髪型をチェックすることに余念がなく、アイドルの陸はファンからの視線を恐れるように、すでにどこか上の空だ。

「……ハハ、みんな元気だね」

唯一、このドロドロした空気に馴染めず、苦笑いを浮かべているのはサッカー選手の海斗だけだった。

「おーい、メンバーの皆さん! 15分後、次の撮影行きます! 次は『第一印象調査』のインタビュー撮りまーす!」

スタッフの大きな声が廊下に響く。
その瞬間、乃愛はすぐさま手鏡を取り出して「あざといアイドルの顔」を作り直し、宙は気怠げな「ミステリアスな配信者」の表情を張り付けた。

誰と組めば、一番自分が「映える」か。
誰を潰せば、自分が生き残れるか。

高校生の放課後のような瑞々しい恋の舞台の裏側で、彼らはすでに、お互いの価値を品定めする「査定」を始めていた。
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