御曹司様はもふもふ好きのペットシッターに運命を感じました

アレクセイが大きな声で「ワンワンワン」と吠えるとようやくその女性は体を起こした。

「ひゃっ、くすぐったい。もう、アレクセイってば。起きるから待って」

目を覚ました女性が俺に気がつくと同時に視線が絡んだ。一瞬時間が止まったかと思うようにまったく動かない女性。でも、俺はパチリと見開かれたその大きな瞳に釘付けになった。

俺が子供の頃からいる家政婦の時枝さんのお孫さんだと聞いてはいた。とはいえ『様』付けで呼ばれたことに距離を感じた。名前で呼ぶように頼んだところ、戸惑いながらも『湊さん』と呼んでくれて嬉しくなった。

心が震えるような出会いがこんな近くにあったなんて、と思う。

その日は予定があると言われ、大した会話もなくすぐに帰ってしまった。杏奈さんが出ていった扉を見つめ、隣で同じように扉を見ていたアレクセイに話しかける。

「アレク、なんだ? 彼女が帰って寂しいのか?」

クゥンと寂しそうな声と共に膝の辺りに頭を擦り付けてくるアレクセイを撫でてやる。

「いい人が来てくれてよかったな。杏奈さんか……なんだか可愛らしい人だったな」

ラグの上で丸くなりぐっすりと眠っていた彼女の姿や、目を覚ました時の驚いた顔が目の奥に焼き付いてしまったようでとても気になった。

彼女は基本的に毎日来てくれていると言うのだから、夕方に時間が取れた時に家に顔を出してみよう。スマホでスケジュールを確認する。幸いなことに3日後の夕方に1時間ほど時間が取れそうだとわかり早速予定を組み込んだ。
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