銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【レオン視点】
「美味しい、本当に美味しいわ、レオン!」
幸せそうに頬を落とし、スプーンを動かすエリーゼを、俺は机に肘をついてじっと見つめていた。
彼女の口元に少しだけシチューのソースがついている。その小さな子供のような無邪気さが愛おしくて、自然と俺の口元も緩んでしまう。
(お前がそんな風に笑ってくれるなら、俺のこの命など、いくらでも盾にしよう)
ふと気づくと、エリーゼが自分の皿から、一番大きくて柔らかそうな、よく煮込まれたお肉をスプーンですくい、俺の目の前に差し出してきた。
「はい、レオン! 一番美味しそうなところ、あげる!」
「……っ」
俺の銀色の耳が、思わずピクンと大きく跳ね上がった。
獣人の世界において、自分の食事の「一番良い部分」を相手に差し出す行為は、深い信頼、あるいは――『求愛』を意味する。
もちろん、前世が別世界の人間であり、今も貴族令嬢としての常識しか持たないエリーゼが、そんな獣人の習性を知るはずもない。ただ純粋に、美味しいものを俺と分け合いたいという、彼女の優しさなのだ。
分かっている。分かっているのだが。
「レオン? 食べないの? 嫌いだった?」
首を傾げ、潤んだ琥珀色の瞳で俺を見つめてくるエリーゼ。
差し出されたスプーンの距離はひどく近く、彼女の甘い体温まで伝わってきそうだ。
「……いや。いただく」
俺は身を乗り出し、彼女の差し出したスプーンから直接、その肉を口に含んだ。
咀嚼する間、エリーゼの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのが分かった。自分のした行為が、平民の距離感としても、男女の距離感としても、少し「気恥ずかしいもの」だとようやく気づいたらしい。
「あ……その、ごめんなさい、私ったら、つい……」
「美味い。……お前から貰ったものなら、何でも美味いな」
俺はわざと少し意地悪く微笑んでみせた。
本当は、心臓がうるさいくらいに脈打っている。彼女を驚かせないよう、ゆっくりと距離を縮めると決めたはずなのに、彼女が無防備に仕掛けてくる可愛らしさに、俺の理性は毎日ギリギリのところで踏みとどまっていた。
「美味しい、本当に美味しいわ、レオン!」
幸せそうに頬を落とし、スプーンを動かすエリーゼを、俺は机に肘をついてじっと見つめていた。
彼女の口元に少しだけシチューのソースがついている。その小さな子供のような無邪気さが愛おしくて、自然と俺の口元も緩んでしまう。
(お前がそんな風に笑ってくれるなら、俺のこの命など、いくらでも盾にしよう)
ふと気づくと、エリーゼが自分の皿から、一番大きくて柔らかそうな、よく煮込まれたお肉をスプーンですくい、俺の目の前に差し出してきた。
「はい、レオン! 一番美味しそうなところ、あげる!」
「……っ」
俺の銀色の耳が、思わずピクンと大きく跳ね上がった。
獣人の世界において、自分の食事の「一番良い部分」を相手に差し出す行為は、深い信頼、あるいは――『求愛』を意味する。
もちろん、前世が別世界の人間であり、今も貴族令嬢としての常識しか持たないエリーゼが、そんな獣人の習性を知るはずもない。ただ純粋に、美味しいものを俺と分け合いたいという、彼女の優しさなのだ。
分かっている。分かっているのだが。
「レオン? 食べないの? 嫌いだった?」
首を傾げ、潤んだ琥珀色の瞳で俺を見つめてくるエリーゼ。
差し出されたスプーンの距離はひどく近く、彼女の甘い体温まで伝わってきそうだ。
「……いや。いただく」
俺は身を乗り出し、彼女の差し出したスプーンから直接、その肉を口に含んだ。
咀嚼する間、エリーゼの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていくのが分かった。自分のした行為が、平民の距離感としても、男女の距離感としても、少し「気恥ずかしいもの」だとようやく気づいたらしい。
「あ……その、ごめんなさい、私ったら、つい……」
「美味い。……お前から貰ったものなら、何でも美味いな」
俺はわざと少し意地悪く微笑んでみせた。
本当は、心臓がうるさいくらいに脈打っている。彼女を驚かせないよう、ゆっくりと距離を縮めると決めたはずなのに、彼女が無防備に仕掛けてくる可愛らしさに、俺の理性は毎日ギリギリのところで踏みとどまっていた。