銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【エリーゼ視点】
レオンの大きな身体に包まれ、彼の力強い心音を聴いているうちに、私の頭は急速に冷えていった。
そうだ、私はもう、あの物語の結末に怯えるだけの「悪役令嬢」じゃない。
自分の手で薬を作り、自分の足でこの街に立ち、そして――こんなにも私を大切に守ってくれる、世界一格好いい騎士様が隣にいるのだ。
「レオン、もう大丈夫。顔を上げるわ」
私がそう言うと、レオンは名残惜しそうに、けれど優しく私を抱きしめていた腕を緩めてくれた。彼の琥珀色の瞳には、未だに鋭い野性の警戒光が灯っている。その瞳が、ただ私一人の安全のためだけに注がれていることが、堪らなく愛おしい。
「あの人たちがなぜここへ来たのか、理由は分からないけれど……逃げるだけじゃなくて、ちゃんと状況を把握しておきたいの。もし私を探しているなら、先手を打って対策を立てなきゃ」
「……本当に、強いな。お前は」
レオンは驚いたように目を丸くした後、誇らしげに口元を綻ばせた。彼の銀色の耳が、私の前向きな言葉に応えるようにパタパタと嬉しそうに動く。
「分かった。ギルドのツテを使って、あの特使どもの目的を調べよう。だが、絶対に俺の側から離れるなよ」
「ええ、離れないわ。ずっと、あなたの隣にいるって約束したもの」
私は微笑み、今度は自分から、レオンの上着の袖をきゅっと掴んだ。
お互いの距離は、まだ一歩ずつ。けれど、外から迫る不穏な影が、皮肉にも私たちの絆をより深く、強固なものへと変えていく。
前世の私が決して手に入れられなかった「戦う勇気」と「信じる人」を胸に、私は再び、自分の物語を歩み続ける。
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