銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
【レオン視点】
「ふふふ……レオンの耳、やっぱりすっごく可愛いわ……」
一杯の果実酒を飲み終える頃、エリーゼの様子が明らかにおかしくなっていた。
白い頬は熟した林檎のように真っ赤に染まり、いつもは理知的な琥珀色の瞳が、今はとろんと潤んで俺をまっすぐに見つめている。
どうやら、彼女は本人が思っている以上に、酒にひどく弱かったらしい。
「エリーゼ、かなり酔っているな。もう宿に戻ろう」
「ええー、戻りたくない。もっとレオンとお話しするの。……ねえ、レオン。さっきお兄様の前で、私のこと『俺の……』って言いかけたでしょ? あれ、なぁに?」
エリーゼが机に身を乗り出し、上目遣いで俺の顔を覗き込んできた。
彼女の吐息からは、甘い果実酒の香りがする。
「なっ……!」
俺の銀色の尾が、椅子の後ろでバシバシと激しく床を叩いた。
あの時、俺は確かにギルバートに対して『俺の、エリーゼに近づくな』と言いかけた。それは、俺の胸の奥にある獣の本能が、彼女を自分の「番」だと認識し、叫びそうになった言葉だった。
「……気のせいだ。言い間違えただけだ」
「うそつき。レオンの耳、今すっごくパタパタ動いてるもの。……レオンは、私のこと、どう思ってる?」
無防備に、まっすぐな好意を向けてくるエリーゼ。
彼女は俺の情愛や獣の独占欲で驚かせないよう、ゆっくりと距離を縮めるべき相手だ。まだ彼女は「自由」を知ったばかり。俺という存在が、ただの依存になってはいけないと、必死に理性を保ってきたというのに――。
「エリーゼ、お前は本当に……自分の可愛さを自覚していない」
俺は低く息を吐き出すと、身を乗り出し、机越しに彼女の小さな両手を優しく、けれど逃がさないようにホールドした。
「俺がお前をどう思っているか、今すぐこの場で教えてやってもいい。だが、それをすれば、お前はもうただの『旅の相棒』には戻れなくなるぞ」
俺の琥珀色の瞳に野性の熱を灯して見つめ返すと、エリーゼは一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
「あ……」
少しだけ、彼女の酔いが引いたように見えた。お互いの視線が、かつてないほど濃密に交錯する。まだ「恋人」ではない。けれど、二人の間にある境界線が、今夜の甘い熱によって、確実に薄れつつあった。
< 33 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop