銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした

新しい朝と、天空の特産

【エリーゼ視点】
翌朝。
昨夜のあの、心臓が爆発しそうなほど情熱的で、甘く、激しい口づけを思い出し、私はベッドの中で一人、シーツを頭から被って悶絶していた。
(あ、あんなに激しく求められるなんて……っ!)
唇に残るレオンの感触と、彼が漏らしたあの低い、独占欲に満ちた声が耳の奥から離れない。
恥ずかしくて顔が出せない私を察してか、レオンは「少し下を回ってくる」と言って、朝早くから部屋を出て行ってくれていた。
「よし、いつまでも恥ずかしがっていられないわ! 今日からまた、私の『新しい生き方』を始めなきゃ」
私は頬を両手でパンパンと叩くと、お気に入りのチュニックに着替えて宿の食堂へと下りた。
ロビーでは、レオンがすでに待っていた。彼は私の姿を見ると、いつものように銀色の耳をパタパタと揺らし、少しだけ耳の先端を赤くしながら、けれど昨日までとは違う、どこか熱い眼差しで微笑んだ。
「おはよう、エリーゼ。よく眠れたか?」
「え、ええ! ぐっすりよ! レオンは?」
「俺もだ。……さあ、朝食を食べたら、昨日ギルドで聞いた『薬草園』へ行ってみよう」
お互いに昨夜の情熱的な時間には触れないけれど、繋いだ手の強さは、昨日までとは明らかに違っていた。
私たちは並んで宿を出て、ハルシオンの最上層にあるというギルド直轄の薬草園を目指した。
そこは、白い霧が優しく地面を這う、幻想的な温室だった。
「いらっしゃい。お前さんがリベルタから来たという高魔力の調剤師かい?」
迎えてくれたのは、背の低いドワーフの老植物学者だった。彼は私のギルドカードを確認すると、奥の特別な温床へと案内してくれた。
「これを見てみな。この街の特産、雲海の水分と強い太陽光だけで育つ『スカイ・ロータス(天蓮華)』だ」
差し出されたのは、半透明の青い花弁を持つ、まるで氷で作られたかのような美しい花だった。
第五十五章:紡がれる知識、高みへの挑戦(エリーゼ視点)
「綺麗な花……。でも、この独特の魔力波形は……」
私は『スカイ・ロータス』にそっと手をかざした。体内の聖属性の魔力が花と共鳴し、頭の中にその薬効成分のデータが流れ込んでくるような感覚に陥る。
「おや、気付いたかい? この花はね、強力な『精神安定』と『魔力回復』の効果がある。だが、成分が揮発しやすくて、普通の人間じゃ調剤の途中で薬効が消えちまうんだ」
「それなら、アルコールではなく『雲海の水』そのもので抽出して、私の聖属性の魔力でコーティングしながら凝縮すれば……」
私が前世の化学知識と今世の魔力制御を組み合わせてアイデアを口にすると、ドワーフの老学者は目を見開いた。
「おいおい、そんな繊細な魔力制御、宮廷魔術師でもできやしねえぞ!?」
「いいえ、できます。私には、それを可能にするための特訓をしてくれた『先生』がいますから」
私は振り返り、温室の入り口で腕を組んで見守ってくれているレオンを見た。
レオンは俺のことか、と驚いたように銀色の耳をぴんと立て、それから誇らしげに口元を緩めた。
「レオン、私、この花を使って新しい薬を作ってみたい! これが成功すれば、もっとたくさんの人の怪我や病気を治せるわ。……もちろん、レオンの過去の傷も、もっと綺麗に」
「ああ、お前の好きに挑戦しろ。お前が魔法を紡ぐ間、周囲の警戒はすべて俺が引き受ける」
レオンが大剣の柄に手をかけ、頼もしく微笑んだ。
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