銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした
天空の調剤、重なる呼吸
【エリーゼ視点】
「ふぅ……よし、集中しましょう」
ドワーフの老学者から譲り受けた『スカイ・ロータス(天蓮華)』を前に、私はハルシオンのギルドから借り受けた調剤室の椅子に深く腰掛けた。
すり鉢やフラスコといった馴染み深い平民街の道具とは違い、ここにあるのは雲海から引いた純水を湛える特製の魔力窯。そして、気圧を一定に保つための精緻な魔法陣だ。
「エリーゼ、始めるぞ。外の気配は俺が完全に遮断する。お前はただ、目の前の花だけを見つめろ」
部屋の入り口に背を向け、大剣を傍らに立てて立つレオンの後ろ姿が見える。彼の銀色の耳はぴんと張り詰め、周囲の些細な雑音すら私の耳に届かないよう、彼自身の魔力で部屋全体を優しく包み込んでくれていた。
昨夜の、あの燃えるような口づけの余韻が、まだ唇の端に微かに残っている。
目を閉じれば、私を求めて低く掠れた彼の声や、腰を引き寄せた逞しい腕の強さが鮮明に蘇って、胸の奥がキュンと甘く疼いた。
(……だからこそ、私は応えたい。彼にただ守られるだけじゃなく、この手で彼を支えられる存在になりたいの)
私は両手のひらを魔力窯へとかざし、聖属性の魔力を均一に紡ぎ出した。
窯の中で、半透明の青い花弁が雲海の水に溶け込んでいく。揮発性の高い薬効成分が気体となって逃げ出そうとするのを、私は昨日レオンとの特訓で身につけた「魔力障壁」の応用で、窯の内側に薄く引き伸ばして完璧に閉じ込めた。
「すごい……! 本当に、一滴も成分が逃げないわ!」
「その調子だ。魔力の出力をそのまま固定しろ。焦るな」
レオンの声が、静かに私の背中を支えてくれる。
彼の存在そのものが、私の最高の精神安定剤だった。前世の、機械の電子音だけが響く冷たい病室。あの孤独な世界では決して得られなかった「誰かと共に何かを成し遂げる」という圧倒的な幸福感が、私の指先に満ちていく。
「ふぅ……よし、集中しましょう」
ドワーフの老学者から譲り受けた『スカイ・ロータス(天蓮華)』を前に、私はハルシオンのギルドから借り受けた調剤室の椅子に深く腰掛けた。
すり鉢やフラスコといった馴染み深い平民街の道具とは違い、ここにあるのは雲海から引いた純水を湛える特製の魔力窯。そして、気圧を一定に保つための精緻な魔法陣だ。
「エリーゼ、始めるぞ。外の気配は俺が完全に遮断する。お前はただ、目の前の花だけを見つめろ」
部屋の入り口に背を向け、大剣を傍らに立てて立つレオンの後ろ姿が見える。彼の銀色の耳はぴんと張り詰め、周囲の些細な雑音すら私の耳に届かないよう、彼自身の魔力で部屋全体を優しく包み込んでくれていた。
昨夜の、あの燃えるような口づけの余韻が、まだ唇の端に微かに残っている。
目を閉じれば、私を求めて低く掠れた彼の声や、腰を引き寄せた逞しい腕の強さが鮮明に蘇って、胸の奥がキュンと甘く疼いた。
(……だからこそ、私は応えたい。彼にただ守られるだけじゃなく、この手で彼を支えられる存在になりたいの)
私は両手のひらを魔力窯へとかざし、聖属性の魔力を均一に紡ぎ出した。
窯の中で、半透明の青い花弁が雲海の水に溶け込んでいく。揮発性の高い薬効成分が気体となって逃げ出そうとするのを、私は昨日レオンとの特訓で身につけた「魔力障壁」の応用で、窯の内側に薄く引き伸ばして完璧に閉じ込めた。
「すごい……! 本当に、一滴も成分が逃げないわ!」
「その調子だ。魔力の出力をそのまま固定しろ。焦るな」
レオンの声が、静かに私の背中を支えてくれる。
彼の存在そのものが、私の最高の精神安定剤だった。前世の、機械の電子音だけが響く冷たい病室。あの孤独な世界では決して得られなかった「誰かと共に何かを成し遂げる」という圧倒的な幸福感が、私の指先に満ちていく。