凍てついた令嬢は、異国の太陽に抱かれる
第三十九話:甘やかな降伏、至宝の計算変更(エルサ・ゼオン視点)
【エルサ視点】強制終了された防壁
「……あ、う……」
ゼオン様の胸の中で、私の大人の頭脳は、完全に煙を上げて停止していました。
唇に残る、痺れるような熱さと、まだ耳元で鳴り響いているかのような「お前を狂おしいほどに愛している」という直球すぎる告白。
前世のビジネスシーンでも、今世の泥沼のような実家でも、常に「裏の意図」を読み解くことだけを叩き込まれてきた私にとって、裏も表もない、ただ質量だけで殴りつけてくるようなゼオン様の愛は、完全に規格外のデータでした。
(統計学も、因数分解も、市場予測も……何も、役に立たない……)
胸に押し当てられた私の両手には、ドクドクと不条理なほど速く、力強く脈打つ彼の心臓の音が伝わってきます。
そのあまりにも誠実で、義務などという言葉では絶対に説明のつかない熱量に触れているうちに、私の脳内で暴れていたフランチェスカ様の言葉(バグ)は、跡形もなく消し飛んでいきました。
「……ゼオン様。これでは、私がただの……思慮の浅い、愚かな子供のようではありませんか」
私は、真っ赤になった顔をこれ以上見られないよう、彼の胸の衣にぐっと額を押し付けながら、消え入りそうな声で抗議しました。
「それでいい。俺の前でくらい、大人の仮面も計算式もすべて捨てて、ただの俺の女でいろ」
頭上から降ってくる、満足げで、ひどく甘い声。
ああ、もう駄目です。私の負けです。
この不条理な覇王の腕の中から逃げ出す計算式など、世界のどこを探しても、最初から存在しなかったのだと、私はようやく「降伏」の答えを導き出しました。
【ゼオン視点】完全なる上書き
胸の中で、完全に大人しくなったエルサの温もりを堪能しながら、俺は極上の勝利の余韻に浸っていた。
いつもなら、すぐに「大人の理性として〜」などと小難しい正論を並べて身を引こうとする彼女が、今は俺の衣をその小さな手でぎゅっと掴んだまま、真っ赤になって震えている。
あの賢すぎる頭脳を、俺の愛という熱量だけで完全にフリーズさせてやったのだ。男として、これ以上の快感があるだろうか。
「カイルから聞いたぞ。お前が、マルドゥーク帝国との交渉で国を救った後も、自分の『存在価値』とやらを低く見積もって悩んでいたと」
俺は彼女の細い腰を再び抱き上げ、ベッドへと優しく横たえた。その上に覆い被さるようにして、琥珀色の瞳を見つめる。
「いいか、エルサ。二度と『コスト』だの『負債』だのという言葉を自分の価値に当てはめるな。お前がただここにいて、俺に愛されている。それだけで、我が国(ガルディニア)の国家予算すべてを注ぎ込む価値がある。それが俺の弾き出した、絶対不変の『確定値』だ」
「……どこまでも、不条理な計算書(スペック)ですね」
エルサは諦めたように、けれど今度は、あの冷たい防壁の向こう側ではなく、心からの、呆れたような愛おしそうな微笑みを俺に向けた。
お前の凍てついた過去も、お前を惑わせようとした羽虫のノイズも、すべて俺の腕の中で溶かしてやった。
これから始まる新しい日々の中で、お前のその神がかった頭脳を、俺への愛を深めるため「だけ」に使わせてやる。
窓の外では、夜明けの光がガルディニアの美しい王宮を白々と照らし始めていた。バグの消え去った二人の夜明けは、驚くほどに、甘く、そして温かい。
【エルサ視点】強制終了された防壁
「……あ、う……」
ゼオン様の胸の中で、私の大人の頭脳は、完全に煙を上げて停止していました。
唇に残る、痺れるような熱さと、まだ耳元で鳴り響いているかのような「お前を狂おしいほどに愛している」という直球すぎる告白。
前世のビジネスシーンでも、今世の泥沼のような実家でも、常に「裏の意図」を読み解くことだけを叩き込まれてきた私にとって、裏も表もない、ただ質量だけで殴りつけてくるようなゼオン様の愛は、完全に規格外のデータでした。
(統計学も、因数分解も、市場予測も……何も、役に立たない……)
胸に押し当てられた私の両手には、ドクドクと不条理なほど速く、力強く脈打つ彼の心臓の音が伝わってきます。
そのあまりにも誠実で、義務などという言葉では絶対に説明のつかない熱量に触れているうちに、私の脳内で暴れていたフランチェスカ様の言葉(バグ)は、跡形もなく消し飛んでいきました。
「……ゼオン様。これでは、私がただの……思慮の浅い、愚かな子供のようではありませんか」
私は、真っ赤になった顔をこれ以上見られないよう、彼の胸の衣にぐっと額を押し付けながら、消え入りそうな声で抗議しました。
「それでいい。俺の前でくらい、大人の仮面も計算式もすべて捨てて、ただの俺の女でいろ」
頭上から降ってくる、満足げで、ひどく甘い声。
ああ、もう駄目です。私の負けです。
この不条理な覇王の腕の中から逃げ出す計算式など、世界のどこを探しても、最初から存在しなかったのだと、私はようやく「降伏」の答えを導き出しました。
【ゼオン視点】完全なる上書き
胸の中で、完全に大人しくなったエルサの温もりを堪能しながら、俺は極上の勝利の余韻に浸っていた。
いつもなら、すぐに「大人の理性として〜」などと小難しい正論を並べて身を引こうとする彼女が、今は俺の衣をその小さな手でぎゅっと掴んだまま、真っ赤になって震えている。
あの賢すぎる頭脳を、俺の愛という熱量だけで完全にフリーズさせてやったのだ。男として、これ以上の快感があるだろうか。
「カイルから聞いたぞ。お前が、マルドゥーク帝国との交渉で国を救った後も、自分の『存在価値』とやらを低く見積もって悩んでいたと」
俺は彼女の細い腰を再び抱き上げ、ベッドへと優しく横たえた。その上に覆い被さるようにして、琥珀色の瞳を見つめる。
「いいか、エルサ。二度と『コスト』だの『負債』だのという言葉を自分の価値に当てはめるな。お前がただここにいて、俺に愛されている。それだけで、我が国(ガルディニア)の国家予算すべてを注ぎ込む価値がある。それが俺の弾き出した、絶対不変の『確定値』だ」
「……どこまでも、不条理な計算書(スペック)ですね」
エルサは諦めたように、けれど今度は、あの冷たい防壁の向こう側ではなく、心からの、呆れたような愛おしそうな微笑みを俺に向けた。
お前の凍てついた過去も、お前を惑わせようとした羽虫のノイズも、すべて俺の腕の中で溶かしてやった。
これから始まる新しい日々の中で、お前のその神がかった頭脳を、俺への愛を深めるため「だけ」に使わせてやる。
窓の外では、夜明けの光がガルディニアの美しい王宮を白々と照らし始めていた。バグの消え去った二人の夜明けは、驚くほどに、甘く、そして温かい。