恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

若手社長の秘密と告白

「……綺麗ですね」

 やってきたのはホテル五階のバルコニーだ。

 街の灯かりが望める景色に、郁は見とれながら呟く。

 遅い時間なので他に人はおらず、二人きりで眺められた。

「そうだろう。郁は夜景とか好きか?」

 褒めたからか、玲音は満足げだ。郁は素直に頷いた。

「はい。灯かりの美しさに視線が吸い寄せられるようで……」

 でもその言い方は、やはり混ぜ返された。

「隣に俺がいるのによそ見をするのか?」

 軽い笑みを含んで言われるので、郁は膨れてしまう。

「もう……そういう意味では……」

 よって拗ねながら玲音のほうを振り返った。

 だけどそこで、あれ、と思う。

 さっきまでは声に笑みを含んでいたのに、表情はまるで違ったからだ。

 どこか切なげな……先程と同じ表情に見えた。
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