恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

終わりが迫って

 一ヵ月はあっという間に過ぎ……残り数日になった。

 最後の週末デートの食事は、初日とは違うホテルの最上階レストランだ。

 高級な店だと事前に言われたので、郁はセミフォーマル姿で向かった。

 スーツ姿の玲音と向き合って食事を摂ったが、そして会話は快いテンポで進んだが、郁の心はどこかスカスカしていた。

 この時間も来週で終わりなのだと思い知らされる。

 それを感じ取ったらしく、レストランを出たあと、玲音から言われた。

「元気がないみたいだ。惜しく思ってくれるのかな?」

 だけど言い方はやはり少しからかっていた。いつもの彼らしい発言だ。

 郁はほっとして、言葉も素直に出てきた。

「それは……もちろんですよ。一ヵ月も続いたんですから」

 恥ずかしいので、言い方は少し拗ねたけれど。

 それを聞いた玲音は足を止める。

 郁が不思議に思って玲音のほうを見ると、玲音は目を細めていた。どこか切なげな目だ。

「……そうか。じゃあ少し寄り道をしていいか?」

 でも言われたのは唐突な提案だった。

 彼の反応にも、提案にも、郁が目を瞬く間に、玲音が郁の手を握った。

「行こう」

 きゅっと握られた感触も、潜めて言われた声も……。

 郁の胸を甘く刺激した。
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