あなたの唇、君の皿ー拗れた片思いのその先にー
呆然とする美月の目の前にある陸斗の顔は真っ赤だった。
「なに、言って」
「好き、だ。高校入って、割とすぐから、ずっと……いつもニコニコしてここで迎えてくれるお前が……好きだった」
「……か、代わりって……」
「ぶん殴られたから……友達でもいられなくなると思って」
陸斗が握った手に力を入れてくる。決して振り解けないほどの強い力。
陸斗は、真っ赤な耳で、ボソボソと続けた。
あの日、美月に告白されるのかと浮かれて失望したこと。
意識されないのが悔しくて手を出しかけたこと。
美月の態度がおかしくなり、後悔したこと。
諦めて彼女を作っても、美月と比べるとダメで、結局美月のところに戻ってきたこと。
好きな人がいる、は、美月を警戒させないためだったこと。
最近、自分が食べるところを美月が熱心に見てることに気がつき始めたこと。
「美月は、他の奴らにはあんな目を向けないから、自惚れてもいいのかなって」
「……っ」
「美月は俺の、食べるとこだけが好き?それでもいい。俺の一部が好きでもいい。毎日一緒にいられる間に必死で口説くから。だから、付き合って。俺のそばにいて。他の奴をあんな目で見ないで。美月が好きだ」
陸斗の手は震えていた。
「泣くほど寂しいって思ってくれるなら、陸上勤務の間だけでも一緒にいて。いいって言われるまで絶対手は出さない。食堂を継ぐ夢はちょっと遅れるかもしれないけど、ついてきてほしい。どうしても無理と思ったり、俺が海洋勤務になったらこっちに戻ってくればいいし……いや、全部俺の勝手な都合なのはわかってるけど、一応、おじさんとおばさんにも話は通してて。美月がいいならって」
「先にお父さんたちに?!」
唖然としていた美月はその言葉にギョッとした。
道理で母が「陸斗くん、今日の夜来るって。お母さんたち出かけるからね」とニヤニヤしていたわけだ。なんでそんなこと知ってるんだろうと思っていた。
美月が陸斗を好きなのはバレバレなのだ。浮かれて舞い上がっていたのだろう。
「美月の夢を応援したいよ。でも、それ以上に美月とずっと一緒にいたい。美月に好きになってもらいたいし、引っ叩かれないでキスもその先もしたいし、美月と結婚したい。もう我慢したくない」
「……なに、それ。勝手な……」
真っ白になった頭を整理してやっと出てきた言葉に、陸斗の表情が曇る。
「やっぱり食堂離れるのは、ダメか? それともやっぱり俺なんかじゃ……」
「馬鹿っ!!」
美月は罵りながら陸斗の太い首に抱きついた。
「美月っ?」
「何が好きな人よ?!代わりっていうから……馬鹿っ!言ってよ!わかんないわよ!」
「ごめん……あのときすごい軽蔑した顔してたから、終わった、って……」
「それをずっと引きずる?!彼女を切れ目なしに作ってた相手に八年も片思いしてた私が可哀想じゃない!」
「え? 八……、どういうことだ?」
「教えてあげない!」
美月は喚いて泣いた。陸斗がおずおずと背中を撫でてくる。振り払った。こういうところがあるから、可愛くないんだろう。ええ?と陸斗は首に齧り付かれたまま弱りきった声を出していた。
でも、その日、陸斗のあの蠱惑的な唇に食べられたのは、美月自身の唇だった。
その後の陸斗は、素早かった。
親に挨拶して同級生たちに宣言して美月の引っ越しを最速で手配して、人目も憚らずくっつきたがった。
「やっとかよ」
驚いたのは、陸斗が船舶に乗っている間、美月に虫が付かないようにして、と友人たちにひたすら頼んでいたこと。食堂での走行会で全員に揶揄われた。
「美月、美味しい」
見た目の百倍くらい小心者の陸斗は、美月のこの癖に気が付かなければとても告白なんてできなかったらしい。
恥ずかしいけど、ダダ漏れフェチがあってよかったな……と、美月は今日も陸斗に自分が食べられながら思った。
「なに、言って」
「好き、だ。高校入って、割とすぐから、ずっと……いつもニコニコしてここで迎えてくれるお前が……好きだった」
「……か、代わりって……」
「ぶん殴られたから……友達でもいられなくなると思って」
陸斗が握った手に力を入れてくる。決して振り解けないほどの強い力。
陸斗は、真っ赤な耳で、ボソボソと続けた。
あの日、美月に告白されるのかと浮かれて失望したこと。
意識されないのが悔しくて手を出しかけたこと。
美月の態度がおかしくなり、後悔したこと。
諦めて彼女を作っても、美月と比べるとダメで、結局美月のところに戻ってきたこと。
好きな人がいる、は、美月を警戒させないためだったこと。
最近、自分が食べるところを美月が熱心に見てることに気がつき始めたこと。
「美月は、他の奴らにはあんな目を向けないから、自惚れてもいいのかなって」
「……っ」
「美月は俺の、食べるとこだけが好き?それでもいい。俺の一部が好きでもいい。毎日一緒にいられる間に必死で口説くから。だから、付き合って。俺のそばにいて。他の奴をあんな目で見ないで。美月が好きだ」
陸斗の手は震えていた。
「泣くほど寂しいって思ってくれるなら、陸上勤務の間だけでも一緒にいて。いいって言われるまで絶対手は出さない。食堂を継ぐ夢はちょっと遅れるかもしれないけど、ついてきてほしい。どうしても無理と思ったり、俺が海洋勤務になったらこっちに戻ってくればいいし……いや、全部俺の勝手な都合なのはわかってるけど、一応、おじさんとおばさんにも話は通してて。美月がいいならって」
「先にお父さんたちに?!」
唖然としていた美月はその言葉にギョッとした。
道理で母が「陸斗くん、今日の夜来るって。お母さんたち出かけるからね」とニヤニヤしていたわけだ。なんでそんなこと知ってるんだろうと思っていた。
美月が陸斗を好きなのはバレバレなのだ。浮かれて舞い上がっていたのだろう。
「美月の夢を応援したいよ。でも、それ以上に美月とずっと一緒にいたい。美月に好きになってもらいたいし、引っ叩かれないでキスもその先もしたいし、美月と結婚したい。もう我慢したくない」
「……なに、それ。勝手な……」
真っ白になった頭を整理してやっと出てきた言葉に、陸斗の表情が曇る。
「やっぱり食堂離れるのは、ダメか? それともやっぱり俺なんかじゃ……」
「馬鹿っ!!」
美月は罵りながら陸斗の太い首に抱きついた。
「美月っ?」
「何が好きな人よ?!代わりっていうから……馬鹿っ!言ってよ!わかんないわよ!」
「ごめん……あのときすごい軽蔑した顔してたから、終わった、って……」
「それをずっと引きずる?!彼女を切れ目なしに作ってた相手に八年も片思いしてた私が可哀想じゃない!」
「え? 八……、どういうことだ?」
「教えてあげない!」
美月は喚いて泣いた。陸斗がおずおずと背中を撫でてくる。振り払った。こういうところがあるから、可愛くないんだろう。ええ?と陸斗は首に齧り付かれたまま弱りきった声を出していた。
でも、その日、陸斗のあの蠱惑的な唇に食べられたのは、美月自身の唇だった。
その後の陸斗は、素早かった。
親に挨拶して同級生たちに宣言して美月の引っ越しを最速で手配して、人目も憚らずくっつきたがった。
「やっとかよ」
驚いたのは、陸斗が船舶に乗っている間、美月に虫が付かないようにして、と友人たちにひたすら頼んでいたこと。食堂での走行会で全員に揶揄われた。
「美月、美味しい」
見た目の百倍くらい小心者の陸斗は、美月のこの癖に気が付かなければとても告白なんてできなかったらしい。
恥ずかしいけど、ダダ漏れフェチがあってよかったな……と、美月は今日も陸斗に自分が食べられながら思った。

