完璧すぎる彼氏

最初の一軒

第12話 「最初の一軒」

高校を卒業した蒼真は、第一志望の大学へ進学した。

新しい生活が始まっても、彼には変わらない目標があった。

「自分の力で会社をつくる。」

その夢のために、大学一年生で宅地建物取引士の資格取得を目指した。

昼は大学。

夕方から深夜までアルバイト。

帰宅すると参考書を開き、眠気と戦いながら机に向かう。

休日も遊ぶことはほとんどなかった。

「蒼真、少し休め。」

父は何度も声をかけた。

「若いうちは遊ぶことも大切だぞ。」

蒼真は笑って首を振る。

「今しかできないことがあるから。」

その言葉どおり、努力は実を結んだ。

大学一年の秋。

蒼真は宅地建物取引士試験に合格した。

合格証を手にした日、真っ先に思い浮かんだのは花音の笑顔だった。

――少しだけ、近づけたかな。

その頃には、アルバイト代も少しずつ貯まっていた。

駅から離れた住宅街。

築五十年の古い一軒家。

雨漏りがあり、庭は草で覆われ、誰も住まなくなって何年も経っていた。

「こんな家、買うのか?」

不動産会社の担当者が驚いたように尋ねる。

「はい。」

蒼真は迷わず答えた。

「この家には、まだ価値があります。」

「普通は建て替えを考える物件ですよ。」

「それでも、もう一度この家を笑顔でいっぱいにしたいんです。」

その真っすぐな言葉に、担当者は思わず笑った。

「変わった青年だ。」

契約を終えた帰り道。

古びた家の前に立ち、蒼真は深く息を吸った。

「ここから始まる。」

翌日から、大学の講義が終わると現場へ向かった。

壁紙をはがし、床を磨き、庭の雑草を抜く。

慣れない作業で手には何度も豆ができた。

それでも、不思議と苦ではなかった。

古びた家が少しずつ生まれ変わっていく姿は、昔の自分が少しずつ前を向いていくようにも思えたからだ。

夕焼けに染まる家を見上げながら、蒼真は小さくつぶやく。

「いつか……君にも見せたい。」

その「君」が誰なのか。

答えは、彼の心の中にしかなかった。
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