完璧すぎる彼氏

突然の訪問者

第15話 「突然の訪問者」

休日の午後。

「今日はモデルハウスを見に行こう。」

蒼真に誘われ、花音は新しく完成した住宅へ向かった。

木の香りが漂う、明るいリビング。

大きな窓から差し込む陽射しが、部屋全体を優しく照らしている。

「素敵……。」

花音は思わず笑顔になった。

「こんな家に住めたら幸せだろうな。」

その言葉に、蒼真は優しく微笑む。

「住めるよ。」

「え?」

「いつか必ず。」

照れくさそうに笑う蒼真に、花音の頬が赤く染まった。

その時だった。

一台の黒い高級車が静かに止まる。

降りてきたのは、五十代くらいの女性だった。

ブランド物のバッグを持ち、鋭い目で蒼真を見つめている。

「久しぶりね。」

その声を聞いた瞬間、蒼真の表情が凍りついた。

「……どうしてここに。」

今まで見たことのない顔だった。

花音の知らない、冷たく張りつめた表情。

女性はゆっくり近づき、小さく笑う。

「立派になったじゃない。」

「用件だけ話してください。」

蒼真の声には温度がなかった。

「相変わらずね。」

女性は花音へ視線を向ける。

「あなたが彼女?」

突然話しかけられ、花音は戸惑う。

「は、はい。」

「そう。」

女性は意味深に微笑んだ。

「知らないのね。」

「……何をですか?」

その瞬間だった。

「やめてください!」

蒼真が女性の言葉を遮る。

その声には、焦りと怒りが混じっていた。

花音は息をのむ。

いつも穏やかな蒼真が、こんな声を出すなんて。

女性は肩をすくめる。

「隠し事をしていても、いつかは知られるわ。」

そう言い残し、車へ乗り込んだ。

走り去る車を見つめたまま、蒼真は動かない。

「蒼真……。」

そっと名前を呼ぶと、彼はゆっくり振り返った。

「ごめん。」

その笑顔は、今にも壊れてしまいそうだった。

花音は何も聞けなかった。

聞いてはいけない気がしたから。

でも胸の奥では、小さな不安が膨らみ始めていた。

あの女性は誰だったのだろう。

そして――。

『知らないのね。』

その言葉の意味とは、一体何なのだろうか。
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