完璧すぎる彼氏

父からの贈り物

第27話 「父からの贈り物」

プロジェクトの採用が決まってから一か月。

『KIRITANI HOME』は今まで以上に忙しい毎日を送っていた。

それでも蒼真は、どれだけ仕事が遅くなっても花音との時間を大切にしていた。

「お疲れさま。」

会社の前で待つ花音を見るたび、自然と笑顔になれた。

そんなある日。

父・誠一から一本の電話が入る。

「今度の日曜日、少し時間はあるか?」

「あるよ。」

「話がしたい。」

久しぶりに訪れた実家。

庭には祖母が好きだった紫陽花が咲いていた。

縁側でお茶を飲みながら、誠一は静かに口を開く。

「蒼真。」

「うん。」

「最近のお前は、本当によく笑うようになった。」

蒼真は少し照れくさそうに笑った。

「そうかな。」

「ああ。」

誠一は嬉しそうにうなずく。

「昔は笑っていても、どこか寂しそうだった。」

その言葉に、蒼真は何も返せなかった。

父は立ち上がり、棚から小さな木箱を持ってくる。

「これは、お前に渡そうと思っていた。」

「何?」

ゆっくりと箱を開ける。

中には、祖母がいつも身につけていた銀色の指輪が入っていた。

派手ではない。

けれど、長い年月を重ねた温かさが感じられる指輪だった。

「おばあちゃんの……。」

「そうだ。」

誠一は静かに微笑む。

「亡くなる前に言っていた。」

『蒼ちゃんが、本当に大切な人と出会ったら渡してあげて。』

蒼真は言葉を失う。

祖母は、ずっと未来を見ていたのだ。

「その人は、花音さんなんだろう?」

蒼真は迷わずうなずいた。

「うん。」

「なら。」

誠一は優しく息子の肩を叩く。

「幸せにしなさい。」

「……。」

「いや。」

少し笑って言い直した。

「二人で幸せになりなさい。」

その言葉に、蒼真の目が潤む。

「ありがとう、お父さん。」

誠一は照れ隠しのように湯のみを手に取った。

「それともう一つ。」

「?」

「結婚したら、会社のことは気にしなくていい。」

蒼真は首をかしげる。

「お前には、お前の会社がある。」

「うん。」

「私が誇りに思うのは、お前が社長だからじゃない。」

誠一はまっすぐ息子を見つめる。

「人を幸せにする仕事を選んだことだ。」

蒼真は静かに笑った。

「それは、お父さんが迎えに来てくれたからだよ。」

父は何も言わなかった。

ただ、息子の成長を嬉しそうに見つめていた。

帰り道。

蒼真は助手席に置いた木箱をそっと見つめる。

祖母の指輪。

父の想い。

そして花音。

「もう迷わない。」

信号が青に変わる。

蒼真は静かにアクセルを踏んだ。

胸に決めた言葉を、伝えるために。
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