王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
1.
 ゴォオオ――!
 悪魔の咆哮のような炎が白亜の王城を呑み込む。
「悪女エメリーネを討てぇ――!」
「この国を滅ぼした悪魔め!」
 遠くで響く群衆の怒号と叫び声が、エメリーネの耳に突き刺さった。
(やっとここまできたのね……)
 燃え盛る玉座の間、崩れ落ちる天井からは火の粉が舞う。ここが焼け落ちるのも時間の問題だろう。
 エメリーネは目の前に立つ精悍な男に、感情のこもらない表情を向けた。それでも王族の証である赤い瞳は炎を宿し高潔に輝き、熱風に揺れる銀青の髪が決意を際立たせる。
「……オディロン」
 その声は、炎の熱を冷ますかのように静かだ。
 彼の名はオディロン・ベルジュ。若き公爵であり、王位継承権を持つ男である。エメリーネが死ねば、間違いなく彼が次の王となる。
「女王エメリーネ……」
 血に濡れた剣を握る彼は、どれだけの命を奪ってきたのか。その唇も誰のものかわからぬ血で濡れていた。
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