王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 女王になりたてのエメリーネに、彼らを説得させるだけの話術はなかった。むしろ、逆に説得させられてしまった。
 エメリーネは胸を押さえ、ずきりと走る痛みを堪えた。ラモン伯爵はまだ生きている。だが、そんな未来を歩んでしまった事実は、心に重くのしかかっていた。
 ベルを鳴らし、シーラを呼んだ。朝の支度を整えながら、エメリーネは穏やかな声で話しかけた。
「シーラも一人では大変でしょう?」
 朝食を終え、着替えを手伝ってもらっているところで、エメリーネがそう口にした。
「エメリーネ様……?」
「わたくしも、来年は成人を迎えます。それに向けて、これから少しずつ政務にたずさわっていくわけだけど、補佐官も護衛も侍女もいない状態って、おかしいとは思わない?」
「それは……」
 シーラも思うところはあるものの、どこかアルマスの影がちらつくのだろう。答えを口にするのをためらっている。
「まぁね。すべてアルマスの差し金だというのは、今になって理解しました。だからこそ、アルマスに従う振りをして、わたくしの味方を増やしていこうかなと。その第一号は、シーラ、あなただけれど」
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