王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
「五日おきに、アルマスにシナモンティーを届けてほしいの」
 笑顔だったエリナの顔はビシッと固まる。
「五日おき? 宰相閣下にですか? シナモンティーを?」
「ええ。わたくしからアルマスへの贈り物よ? 身体にいいお茶だと聞いたから、アルマスにも飲んでもらって、健康でいてほしいって、言ってきたの」
「ですが、シナモンティーは飲み過ぎると……」
「でも、わたくしはそんなこと知らないの。ただ、アルマスには元気でいてほしいだけなのよ?」
 エメリーネが少しだけ口角を上げると、エリナも「そういうことですか……」と理解したようだ。
「わたくしだって、さすがにアルマスを毒殺しようとか思っていないわ。だけど、お茶の飲み過ぎでお腹を壊すくらいなら、許されるのではなくて?」
「そうですね。それが『知らない』ことの恐ろしさです。その作用を正しく知れば、毒は薬にもなるし、薬は毒にもなるのです。ちなみにシナモンは取り過ぎると、お腹を壊すよりもっと酷い症状が表れます」
 時として無知は罪になる。まして、一国を治めようとする者が、無知でいいわけがない。
 それなのに一度目の人生は、学ぶ機会を奪われ、無知でいることを強いられた。
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