王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 修道院に入れば、衣食住には困らないと考える者も多いのだろう。だが修道院の生活は、彼らが考えている以上に厳しいものだと言っていたのはベルトルトである。彼はまた司教として聖堂の居住区で暮らしているが、それだって決して豊かとはいえないもの。
 孤児院内には、子どもたちの元気な声が響いていた。それはエメリーネの慰問を歓迎する声だ。
「オウネル侯爵夫人、わたくしはどうしたら……」
 初めての慰問ということもあり、エメリーネはオウネル侯爵夫人の同行を頼んでいた。そんな侯爵夫人からオーラは見えないため、彼女が今、どう思っているのかまったくわからない。さらに、ここにいる子どもたちも同様であり、怒っているのか喜んでいるのかもわからない。
「エメリーネ様。難しく考える必要はありませんよ。何より子どもたちは、遊ぶことが大好きなのですから。遊びを通して、必要な知識を身につけていくのです」
 おずおずと絵本を差し出す女の子からそれを受け取ったエメリーネは、近くにいる子どもたちを手招きし、絵本を読み始めた。
< 217 / 226 >

この作品をシェア

pagetop