王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 今でもエメリーネは「あの力はなんだったのだろう」「どうして、もう一度、人生をやり直しているのだろう」と思うときもあるが、きっとテレジア神の力によるものなのだと、勝手に納得していた。
「とうさま~、かあさま~」
 三歳になった息子は、ベルジュ公爵邸の花で溢れる庭園を元気に走り回っている。
 オディロンと結婚したエメリーネは、住まいをベルジュ公爵邸に移し、そこからオディロンと共に王城へと通っている。
 エメリーネの婚約が整った後から、父王は精力的に政務をこなし、それを宰相となったラモン伯爵が積極的に支えていた。
 そしてエメリーネが結婚すると、父王は新婚の二人にベルジュ公爵邸で暮らすことを提案したのだ。つまり、蜜月である。
 その蜜月が、結婚して四年経った今も終わっていないだけともいう。つまりオディロンが王城へ住まいを移すのを嫌がっているのだ。
 今のところ、こちらで暮らしていても不便はないため、エメリーネは何も言わないが。
「うぇ~ん、うぇ~ん、に~に~、ま~ま~、どこ~、ぱ~ぱ~」
 突然、一歳の娘の泣き声が聞こえ、エメリーネが慌てて立ち上がると、左手につけている腕輪が、しゃらりと揺れた。だがすぐにオディロンが「俺が行く」と制する。
 エメリーネが「でも」と言いかけるが、オディロンはそっと耳元でささやく。
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