王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 それでもシーラを側に置くことが許されているのは、ひとえにラモン伯爵がさして権力をもたないからだ。伯爵が一人騒いだとしても、アルマスに敵うはずもない。財力も、政治力も、軍事力さえも、すべてにおいて劣っているのだから。
「シーラにはわたくしの侍女でいてほしいわ。もちろん、可能であればあなたが結婚した後も。いえ、将来はわたくしの子の乳母というのもありね」
 エメリーネが冗談めかしてそう言うと、その軽やかな口調に、シーラの表情もふっと和らいだ。
「私はエメリーネ様がご結婚されるまでお側を離れるつもりはございませんし、ご結婚された後も、誠心誠意お仕えできればと思っております」
「ふふっ。むしろそれは、わたくしからお願いしたいくらいだわ。そうなると、やはり補佐官は他の方を選ばなくてはならないわね。決まるまでは、いろいろと手伝ってちょうだい」
「もちろんです」
 では、お茶を淹れますね、と場の雰囲気を明るくしようとシーラは努める。
 エメリーネは執務席に静かに腰掛け、もらってきた目録に目を通す。
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