王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 先ほどまでの丁寧な言葉遣いとはかわって、その言葉にはからかいが混じっている。オディロンはニヤリと笑い、まるでエメリーネの心を見透かしているかのよう。
 そしてエメリーネの反応を見て楽しんでいるのだ。
「ええ、そうね。だって本当は怪我なんてしていませんもの。わたくし、いつまで杖をついて歩けばいいのかしら? 正直、不便でならないわ」
 エメリーネは唇を尖らせる。その声には少女らしい不満がにじんでいた。
「俺の芝居に乗ると言ったのは王女様のほうだろう? 乗ったからには最後まで付き合ってもらわないとな」
 彼の声は軽やかだが、その裏に潜む意図はつかみどころがない。エメリーネは小さく「ふん」と鼻を鳴らし、彼のからかいに乗らないよう心を奮い立たせた。
「でも、そろそろメルケルに診てもらおうと思っています。もし、メルケルが大丈夫だと言えば、普通に歩いてもいいでしょう?」
 メルケルは、侍医として長年仕えているため、エメリーネにとって気心の知れた存在である。親しみを込めて彼の名を呼び、オディロンに少し挑戦的な視線を投げた。
「エメリーネ様。お花は机の上と、こちらのテーブルに分けて飾ってもよろしいでしょうか?」
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