溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~

第27話 魔のトライアングル

 ジェットコースターを堪能……といっても、私は苦手で全然楽しくなかったけど。

 でも太陽は大満足の様子で、隣で嬉しそうに笑っている。
 そんな顔を見ていると、こっちまで頬が緩んでしまう。

 やっぱり、弟の笑顔っていいなあ。

 出口を抜けると、別々の方向からあきらと守兄が駆け寄ってくる。
 二人の視線がぶつかったかと思うと、同時にふんっと顔を背けた。

 犬猿の仲って、こういうのを言うんだろうな。

 思わず大きなため息がもれる。

 そんな中、太陽が「次はコーヒーカップに乗りたい!」と元気いっぱいに言いだした。

 コーヒーカップ。
 つまり、四人で一緒に?
 うーん、でもあの二人が素直に乗るかなあ。

 と、悩んでいる間に、太陽が二人の背中をぐいぐい押していく。
 そして、あれよあれよという間に私たちは四人で一つのコーヒーカップに乗ることになっていた。



 とてつもなく気まずい。

 私は視線を彷徨わせる。
 右にあきら、左に守兄。見事に挟まれて座る羽目になった。

 し、視線が痛い。

 二人とも、私をじっと見つめてくる。
 そして、ふいに視線がぶつかると睨み合いが始まる。

 オーラがバチバチ飛び交っていて、とてもじゃないけど落ち着けない。
 こんな空気で楽しめるわけないよ。
 ……太陽は楽しそうだけど。

 目の前で盛り上がる弟を、じろっと睨みつける。
 まあ、彼には関係ないことか。

 やがて機械が動き出しても、その状態は変わらなかった。

 太陽が一人ではしゃぐのを前に、私は俯いて沈黙を守る。
 あきらと守兄は、私を見つめるか、互いに鋭く睨み合うか。その繰り返しだった。


 無事、なのかどうかはわからないけど。
 コーヒーカップから降りた私は、ほっと息をついた。

「つ、疲れた……」

 魔のトライアングルから、ようやく脱出。
 けれど降りた今も、二人はまだ睨み合っている。

 も、もういい加減やめてよ。

 ひとり落ち込んでいると、太陽が元気いっぱいに声をかけてきた。

「姉ちゃん、楽しかったね! 次は観覧車に乗ろうよ」

 彼が指さしたのは、この遊園地でも名物の大観覧車だった。

 か、観覧車って。
 嫌な予感しかしないんだけど。



 観覧車の列に並ぶとすぐに、二人の言い争いが始まった。

「いやだね。俺は星の隣じゃなきゃ絶対に乗らない!」

 あきらが拗ねた顔で、棘のある声を放つ。

「なにをわがまま言ってるんだ。大人げない」

 守兄は呆れた様子で、鼻で笑った。
 空気がまた一気にピリつく。

 誰が私の隣に座るか。たったそれだけのことで、もう大揉め。

「おまえだって、どうせ星の隣がいいって思ってるんだろ!」

「そうだね。君に座らせるくらいなら、俺が座る」

「っ……やっぱりそうじゃねえか! ぜってぇ譲らないからな!」

「望むところだ」

 バチバチと火花が散る。

 ど、どうしよう。

 私があたふたと二人を見守っていると、
 太陽がそっと近づいてきて、小声で囁く。

「姉ちゃん。僕、いいこと考えた」

「え?」

 太陽の瞳がいたずらっぽく輝く。
 何を言い出すのか、嫌な予感とほんの少しの期待が胸をよぎった。
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