溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~
第28話 がちゃがちゃ観覧車
というわけで、私たちは観覧車に乗り込んだ。
私の隣には守兄。向かいには、不機嫌オーラ全開のあきら。
そしてその隣では、眼下を嬉しそうに眺める太陽。
どうしてこんな座席順になったかというと。
さっきまで揉めに揉めていた二人に、太陽が「じゃんけんで決めよう」と提案したのだ。
年下にたしなめられ、渋々じゃんけんに応じた二人。
その結果が、これ。
太陽は最初から私の隣を譲ってくれた。
あの二人と争う気なんて、初めからなかったんだろう。
「わあ、きれー。ね、姉ちゃん」
太陽が無邪気に笑いかけてくる。
「え、ええ……そうね。よかった」
けれど正直、景色どころじゃない。
この狭い箱の中に漂う空気が重すぎて、綺麗なんて言える余裕はなかった。
あきらと守兄は沈黙。けれどピリピリとした気配だけは充満している。
そんな中でも太陽は、にこにこ鼻歌まで歌っていて。ほんと、マイペースで羨ましい。
私は、また喧嘩が始まるんじゃないかと気が気じゃなかった。
「ね、星」
ふいに名前を呼ばれ、顔を向けると、ぐいっと守兄の綺麗な顔が近づいてきた。
ち、近い。
「思い出さない? 前もこうやって三人で遊んだな。楽しかったなあ」
爽やかな笑顔と、熱い視線。
頬が一気に熱くなる。しかも、至近距離すぎて照れる。
そ、それに。
おそるおそるあきらに視線を向けると、鬼のような形相で睨まれていた。
「おい、おまえ、星に近づきすぎなんだよ!」
限界を迎えたように、あきらが叫ぶ。
「あー、余裕のない男って嫌だな。ね、星」
挑発するように、守兄は私の手を握った。
「おい、こらっ!」
あきらが立ち上がろうとした瞬間、ゴンドラがぐらりと揺れる。
「わあ、やめてよ!」
太陽が声を上げた。
「あ、わりぃ」
素直に座り直すあきら。その姿がちょっと可愛い。
なんて見惚れていると――
「……星」
頬に大きな手が触れた。優しく包み込まれ、守兄の方へ向かされる。
至近距離の視線に息が詰まる。
「な、なに?」
まん丸の目で見返すと、ふっと微笑まれた。
「かわいい……」
「なっ――」
「てめえ!」
あきらが、もう我慢できないように私の腕をぐいっと掴んだ。
そのまま引き寄せられ、私は彼の腕の中にすっぽり収まってしまう。
体温、吐息、すべてに包まれ、鼓動が早鐘を打つ。
しかしその瞬間、あきらの動きでゴンドラが大きく揺れた。
「もう! 揺らさないでよ!」
太陽が怯えたように身体を縮める。
そんな中、守兄はただ黙って、あきらを鋭く睨みつけていた。
しばらく私はあきらの腕の中で、ゴンドラの揺れが収まるのを待った。
やっと落ち着いてきたころ、守兄がぽつりと口にする。
「……お子様だな」
「あ?」
今にも切れそうな顔で、あきらが睨み返す。
せっかく収まりかけていた空気が、またピリピリと張りつめた。
っていうか、それより。
私、あきらに抱きしめられたままなんですけど!?
心臓はバクバク、体は密着、吐息も近すぎる。
ち、近い、近いよ~!
「なに? 星、照れてるの?」
ニヤニヤ顔で覗き込んでくるあきら。
「え、だって……そりゃ、そうだよ」
恥ずかしくて俯くと、彼は嬉しそうに笑った。
「何言ってんだよ。いつもはもっとすごいことしてるだろ?
キスとか、それ以上とか……」
「えっ――!」
顔が一気に熱くなる。
火照る頬の熱を感じつつ視線を動かすと、目に映ったのは、鬼のような形相の守兄。
さっきとは逆に、今度は彼が烈火のごとく睨みつけていた。
二人の視線がぶつかり合い、激しい火花が散る。
「ちょっと、こんなとこでやめてよ」
太陽の冷めた声で、我に返る。
そ、そうだ。弟がいるんだった。忘れてた!
弟の前でこんなこと、恥ずかしすぎる。
「そうだよ、もういいじゃない? 二人とも落ち着いて。
こんな観覧車の中で何やってんのよ」
私は必死であきらの腕から抜け出そうとした。
けど。ん? 動けない?
がっちりホールドされていた。
「あきら?」
恐る恐る振り返ると、彼はにこりと笑って言った。
「もう離さない。いいじゃん、このままで」
「な、なに言ってんの! せ、狭いでしょ」
「ううん、全然。むしろ、この方が落ち着く」
そう言って、さらに抱き寄せ、頬ずりまでしてくる。
「ちょ、ちょっと――」
そのとき、別の手に腕をぐっと掴まれた。
えっ?
守兄だった。真剣な眼差しで、私の腕を握っている。
「ま、守兄……どうしたの?」
目を瞬かせる私に、彼は淡々と告げた。
「彼が君を離さないのなら、俺もこの手を離さない」
「はい?」
目が点になる。なにそれ、どういう理屈!?
まさか、守兄まで張り合ってるの? そんな子どもじみたこと。
でも、彼の手はびくともしない。
あきらは不機嫌オーラを隠さず、守兄を睨み続けている。もちろん、私を抱きしめたまま。
太陽はというと、ゆっくり首を振って、ふぅっとため息。
完全にあきれ顔だ。
ちょっと待って。もしかして、地上に着くまでこのまま!?
いやーーー!
重苦しい空気の中、私は冷や汗をかきつつ必死で打開策を探した。
けれど何ひとつ思いつかず。
結局、あきらの腕の中、守兄に腕を掴まれたまま。
その緊張を抱えながら、私はただ観覧車が地上に降りるのを待つしかなかった。
私の隣には守兄。向かいには、不機嫌オーラ全開のあきら。
そしてその隣では、眼下を嬉しそうに眺める太陽。
どうしてこんな座席順になったかというと。
さっきまで揉めに揉めていた二人に、太陽が「じゃんけんで決めよう」と提案したのだ。
年下にたしなめられ、渋々じゃんけんに応じた二人。
その結果が、これ。
太陽は最初から私の隣を譲ってくれた。
あの二人と争う気なんて、初めからなかったんだろう。
「わあ、きれー。ね、姉ちゃん」
太陽が無邪気に笑いかけてくる。
「え、ええ……そうね。よかった」
けれど正直、景色どころじゃない。
この狭い箱の中に漂う空気が重すぎて、綺麗なんて言える余裕はなかった。
あきらと守兄は沈黙。けれどピリピリとした気配だけは充満している。
そんな中でも太陽は、にこにこ鼻歌まで歌っていて。ほんと、マイペースで羨ましい。
私は、また喧嘩が始まるんじゃないかと気が気じゃなかった。
「ね、星」
ふいに名前を呼ばれ、顔を向けると、ぐいっと守兄の綺麗な顔が近づいてきた。
ち、近い。
「思い出さない? 前もこうやって三人で遊んだな。楽しかったなあ」
爽やかな笑顔と、熱い視線。
頬が一気に熱くなる。しかも、至近距離すぎて照れる。
そ、それに。
おそるおそるあきらに視線を向けると、鬼のような形相で睨まれていた。
「おい、おまえ、星に近づきすぎなんだよ!」
限界を迎えたように、あきらが叫ぶ。
「あー、余裕のない男って嫌だな。ね、星」
挑発するように、守兄は私の手を握った。
「おい、こらっ!」
あきらが立ち上がろうとした瞬間、ゴンドラがぐらりと揺れる。
「わあ、やめてよ!」
太陽が声を上げた。
「あ、わりぃ」
素直に座り直すあきら。その姿がちょっと可愛い。
なんて見惚れていると――
「……星」
頬に大きな手が触れた。優しく包み込まれ、守兄の方へ向かされる。
至近距離の視線に息が詰まる。
「な、なに?」
まん丸の目で見返すと、ふっと微笑まれた。
「かわいい……」
「なっ――」
「てめえ!」
あきらが、もう我慢できないように私の腕をぐいっと掴んだ。
そのまま引き寄せられ、私は彼の腕の中にすっぽり収まってしまう。
体温、吐息、すべてに包まれ、鼓動が早鐘を打つ。
しかしその瞬間、あきらの動きでゴンドラが大きく揺れた。
「もう! 揺らさないでよ!」
太陽が怯えたように身体を縮める。
そんな中、守兄はただ黙って、あきらを鋭く睨みつけていた。
しばらく私はあきらの腕の中で、ゴンドラの揺れが収まるのを待った。
やっと落ち着いてきたころ、守兄がぽつりと口にする。
「……お子様だな」
「あ?」
今にも切れそうな顔で、あきらが睨み返す。
せっかく収まりかけていた空気が、またピリピリと張りつめた。
っていうか、それより。
私、あきらに抱きしめられたままなんですけど!?
心臓はバクバク、体は密着、吐息も近すぎる。
ち、近い、近いよ~!
「なに? 星、照れてるの?」
ニヤニヤ顔で覗き込んでくるあきら。
「え、だって……そりゃ、そうだよ」
恥ずかしくて俯くと、彼は嬉しそうに笑った。
「何言ってんだよ。いつもはもっとすごいことしてるだろ?
キスとか、それ以上とか……」
「えっ――!」
顔が一気に熱くなる。
火照る頬の熱を感じつつ視線を動かすと、目に映ったのは、鬼のような形相の守兄。
さっきとは逆に、今度は彼が烈火のごとく睨みつけていた。
二人の視線がぶつかり合い、激しい火花が散る。
「ちょっと、こんなとこでやめてよ」
太陽の冷めた声で、我に返る。
そ、そうだ。弟がいるんだった。忘れてた!
弟の前でこんなこと、恥ずかしすぎる。
「そうだよ、もういいじゃない? 二人とも落ち着いて。
こんな観覧車の中で何やってんのよ」
私は必死であきらの腕から抜け出そうとした。
けど。ん? 動けない?
がっちりホールドされていた。
「あきら?」
恐る恐る振り返ると、彼はにこりと笑って言った。
「もう離さない。いいじゃん、このままで」
「な、なに言ってんの! せ、狭いでしょ」
「ううん、全然。むしろ、この方が落ち着く」
そう言って、さらに抱き寄せ、頬ずりまでしてくる。
「ちょ、ちょっと――」
そのとき、別の手に腕をぐっと掴まれた。
えっ?
守兄だった。真剣な眼差しで、私の腕を握っている。
「ま、守兄……どうしたの?」
目を瞬かせる私に、彼は淡々と告げた。
「彼が君を離さないのなら、俺もこの手を離さない」
「はい?」
目が点になる。なにそれ、どういう理屈!?
まさか、守兄まで張り合ってるの? そんな子どもじみたこと。
でも、彼の手はびくともしない。
あきらは不機嫌オーラを隠さず、守兄を睨み続けている。もちろん、私を抱きしめたまま。
太陽はというと、ゆっくり首を振って、ふぅっとため息。
完全にあきれ顔だ。
ちょっと待って。もしかして、地上に着くまでこのまま!?
いやーーー!
重苦しい空気の中、私は冷や汗をかきつつ必死で打開策を探した。
けれど何ひとつ思いつかず。
結局、あきらの腕の中、守兄に腕を掴まれたまま。
その緊張を抱えながら、私はただ観覧車が地上に降りるのを待つしかなかった。