魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
グリンカが出ていったのを確認すると、アレクサンドラはもう一度水盤を覗き込んだ。

羽先で水面を揺らすと波立ち、天使の姿が歪んでまた現れた。

黒髪に純白の翼を持つ大天使が、資料を片手に地図にしるしをつけている。

ニンゲン界の漆原教授もそうだったが、彫刻のように、彫りが深く整っている顔立ち。

鼻筋が通り、唇がやや薄いのが、冷酷な印象を与える。

瞳は黄金に近い、深いアンバー色で思慮深さを、そして筋張って大きい手に目が行く。

そして、その手からは、魔界のすべてを断ち切る黄金の長剣が出現するのだ。

時に、ある国の姫君を守る騎士として、彼は守護天使の役目も兼ねている。

ふぅ・・・手の届かない・・・秘密の想い人・・・

こうして暗闇の中で見ているだけで・・・いいと思っていたのだが。

その声が聞きたい、会ってみたいという思いがつのり、ついに単独行動をしてしまった。

魔界の連中にはワルプギルスナイトの下見ということで、うまくごまかしたが・・・

アレクサンドラはもう一度、小さなため息をつき、水盤の水をそっとかき混ぜた。

黒髪の天使は渦に流れ、消えていった。

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