魔女の受難と天使の試練・監視という奇妙な同居生活からはじまる愛
<魔女の選んだネクタイ>

昼食は、ペペロンチーノパスタとサラダ。

付け合わせのラタトゥイユは昨日、グルシアが作って冷蔵庫で冷やしてあったものだ。

オレガノは使わない。

昔からオレガノは魔女避けに使われてきた歴史がある。

グルシアは、パスタをフォークにグルグル巻きつけるのに苦戦している魔女に

「食べ終わったら出かけるぞ。着替えをしなさい」

そう言って、フォークを置いた。

「どこに行くんだ?」

「隣の教会だ。君がどのくらい無害になっているのか、測定試験がある」


グルシアは、チラシを机の上に置いた。

教会で行われる、チャリティーピアノリサイタルだ。

「夜に演奏会があるので、天界がらみの者も多く関係者として来ている。
午後のリハーサルの時に、測定試験が行われる。
特に、どうこうという事はない。教会の中に入り、座っているだけで終わる」

グルシアは事務的に言った。

無害化測定試験。

それは封印措置の決定を出すかどうか、判断材料になる重要な試験だ。

邪悪度が高ければ、すぐに封印措置になるし、ある程度、無害化が進んでいれば徴(しるし)をつける段階に移る。

「試験なのかぁ。じゃぁ、あの黒のドレスにしよっかなぁーー」

魔女は気合が入ったのか、寝室にすっ飛んで行った。

「これ、これっ!!」

魔女が戻ってくると、グルシアにペイズリー柄のネクタイを差し出した。

「せっかくヨメが選んだんだから、これにしんさい」

「ああ、そうか」

嫁というワードにグルシアは戸惑いながらも、ネクタイを受け取った。

「結んであげるから・・・座ってくれや」

手早くネクタイを結ぶが、慣れていないのかうまくいかない。

「いいよ、自分でできるから」

「おおっと、首、絞めちゃおうかなっ?」

グルシアが素早く魔女の手首をつかんで、動きを押さえた。

「まったく冗談でも・・・やめてくれ!!」

「気持ちが、ざわざわするんだ・・・落ち着かない」

魔女は、コテンと顔をグルシアの胸につけた。

不安と戸惑いの気持ちが伝わってくる。

グルシアは触れるか触れないかぐらいの力加減で、魔女の背中に手をまわした。

「封印が決まったら・・・アンタがやるんだよね」

「ああ、そうなる」

グルシアが、ゆっくりと息を吐くように答えた。

「そんなら、いいよ」

魔女は胸に下がる、グルシアのリングを握りしめた。
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