素のまま恋
騒ぎがおさまるまでのことを考えると、胃が痛くなりそうだぞ私は。
今でさえなんだか居心地が悪い気がしてるって言うのに。
「だってそうだろ?こんだけ大々的に言っときゃ、お前に手ェ出そうなんて思わないだろうし、悪い虫もつかねぇ。いい牽制になるぜ」
……よくもまぁ、そんな言葉をすらすらと。
その言葉が自分に言われているって分かるから……顔が熱くなってきてる気がしなくもない。
「牽制をするほど、私はモテやしないっての。次期女将だって、旅館や学校では品よくしてるように見せてるけど、実際はずぼらでこんなんだから」
「別にいーじゃねぇか。そんなお前のことが好きだって言う男が、ここにいんだからよ。俺からモテりゃ十分だろうが」
ちげぇのかよ、なんて貴公子は聞いてくるけど、聞いたわりに顔は自信に溢れていて。
「ふふっ、違わねぇ」
「だろ?」
笑顔で返せば、貴公子も満足気に笑った。
「あ、後レッスンやめんの禁止な」
「え」
貴公子曰く、一緒の時間をなくしたくないってことらしい。
だから、回数を減らしてもレッスン通いは続きそうだ。
✧
卒業も目前に迫り、私たちについて騒ぐ声がしだいにおさまってきた頃──
【近くの駐車場に待ち合わせな】
放課後、すでに待っていた貴公子のもとに駆け寄れば、貴公子はスマホから顔を上げた。
「詩姫」
「貴公子!聞いて欲しいことがある!」
「んだよ急に」