素のまま恋
「進路は変わらないから、大丈夫」
「じゃあ、卒業しても沢山会えるよね?」
「私、次期女将よ?死ぬまであの旅館にいるんじゃない?」
少し盛りすぎたかもしれないけれど、そのくらいの覚悟を持っていかないといけないレベル。
正直、まだその域に気持ちは達していない。
それは……これから育んでいくしかないから。
「そっかぁ、ならわたしもパン屋つぶさないように頑張らなきゃ!きちんとした初任給で、皆森旅館泊まりに行こうかな。その時は、詩姫とお泊りで」
「私が旅館の部屋に寝るの?……でもやってみたいかも」
「じゃそれを卒業後の楽しみの一つに……って、あれ?」
突然窓の外を見て固まる杏奈。
私も外へと目をやると、よく知る人物が見えた。
──貴公子……?
と、その隣を楽しそうに歩いてるひとりの女の子。見た目は、私たちと同い年くらいだろうか。
……彼女、かな。
気付かれなくとも、あまりじろじろ見るものではないため、だいぶ冷めたラテを口にした。
「え、詩姫気にならないの?」
「ならなくないけど、貴公子だって彼女くらいいてもおかしくないわ。モテるみたいだし?」
「リアクション薄くない?わたし的には貴公子殿からアピールされてる詩姫、満更じゃなさそうだなーと思ってたんだけど……」
「あれはアピールじゃなくて、友達感覚なだけでしょ?」