片想いが終わる頃、恋が始まる。
世界一、遠い特等席



知ってた。


……知ってたよ。




最初から、

他の誰かをすきなことぐらい。




アイツのことをずっと

追いかけていることくらい。






だから、俺は─────



『今のままじゃ、どっちも失うよ』









「────ほんと、なにしてんだろ」



壁にもたれかかった身体から、ズルズルと力が抜けていく。





アイツのことで彼女が傷ついて。




『俺の前くらい、強がらなくていいから』

『俺なら、そんな顔、させないのに。』

『俺が、翡翠のことを一番見てる』



ほんの一瞬生まれた綻びに付け込んで。

ここぞと言うばかりに、甘い言葉を囁いて。


……彼女を自分のモノにしようとしたクセに。





アイツを視界に入れたとたん変わった表情を見たら、喉の奥まで出かかっていた"好き"

……その言葉が出てこなくなった。




それどころか。


わざわざライバルであるアイツの背を押すようなことを言って。




「はぁ………」



────今頃、あの二人はハッピーエンドになってるのかな。




気を抜けば緩んできそうな涙腺を留めるように、キツく唇を噛み締めて。

ズキズキとする胸に、必死に気づかないフリをした────……



< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop