片想いが終わる頃、恋が始まる。
***


俺と、翡翠の出会いはわずか七歳の頃だった。





代々家のしたきりで、高瀬組の側近となることが決まっている椎名家。



長男である俺も例外ではなく、小さい頃から当初の若頭──葵の側近が務まるよう日々育てられていた。




そしてやってきた顔合わせの日。

俺は七歳、葵は十歳。




幼い頃のおぼろげな記憶。


でも、大人に負けないくらい凛としたその姿だけは、今もはっきりと覚えている。



──一生、この人についていく。


それが、俺が人生で初めて下した、絶対の決意だった。










────その日の帰り道。



日が沈みかけた夕暮れ時、ふと目に入ったひとりの少女。


縁側にそっと腰掛け、ジッと茜色の空を見上げているその姿に。



────気がつけば、吸い寄せられるように、その場所に足を進めていた。




『君は、だれ?』


静寂に溶けるような、微かに震える問いかけ。


すると、その少女はパッと無邪気な笑みを浮かべて、俺の世界を鮮やかに染め上げた。



『わたし?わたしはねー、すい!しののめすいって言うの!』



『……すい、ちゃん?』


『うんっ、すいはねぇ、"たかせぐみ"の"おじょう"なんだよ!すごいでしょ?』



嬉しそうに瞳をキラキラ輝かせながら、どこまでも無邪気に笑う、"すいちゃん"。



────それが。

俺と、世界で一番大切な"翡翠"との、すべての始まりだった。


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