片想いが終わる頃、恋が始まる。
これ以上ない、最悪のタイミングだった。
今までの人生の中で、最も邪魔をされたくなかったまさにその瞬間に。
────一番入ってきてほしくない奴が、そこに立っていた。
だけど正直、その時の俺は、まだ勝算があると思い込んでいた。
葵の存在を逆手に取れば、傷ついた翡翠をさらに俺の方へと引き寄せられるはずだ、と。
だけど────。
葵の姿を見た瞬間、俺の腕の中で、翡翠の身体が小さく強張った。
……その瞬間に彼女の頬を染めた、隠しきれない赤らみ。
それを目撃した途端、自分の中で何かが急速に冷めていく音がした。
最初から、俺の入り込む隙なんて、一ミリだって存在しなかったんだ────。
そんな残酷な現実を、まざまざと見せつけられた気がした。
────さらには。
泣きながら駆け出した翡翠を、追おうともしない葵の態度。
……そのあまりの鈍さに、今度は別の怒りが込み上げてきて。
結局、彼女を奪いたいという本心とは裏腹に、俺の口を突いて出たのは、恋敵の背中を強引に押すような言葉だった。
────その瞬間、俺の中の何かが完全に終わりを迎えた。
まだチャンスがあるかもしれない、なんて身の程知らずな希望を抱いた自分が、つくづく馬鹿らしくなる。
そもそも、俺が翡翠に恋なんてしなければ、こんなに苦しまずに済んだのに、と。