ルーチェに恋をして

第四話 秘密の領域〜ステラ寮


 綺麗に整えられた庭園を後ろに、お屋敷の外階段を執事の安西と登る。
 
 安西が扉を開けると見たことのない空間が目の前に広がった。
 
 吹き抜けの天井にシャンデリア、大理石の床は歩くと足音が空間に響き渡る。
 中央には映画に出てくるような大階段がそびえたち、上の階からドレスアップしたお姫様でもおりてきそうだった。

 あぁ……ムリデス……
 
 こんな光属性住むみたいな場所、私には無理デス……。
 輝いた空間に自分の存在が(かす)んで消えそうだった。

 今すぐ実家へ帰りたい気持ちに駆られるが、もう逃げ場はない。
 諦めて前へ進むしかないのだ。

 
「あれ、安西?」
 
 
「これは(つむぐ)様、お久しぶりにございます。」
 
「なんだ、僕の担当についてないからてっきりもう居ないのかと……」
 
 薄いベージュの髪色に柔らかい目、優しく見えるその姿にシルバーフレームのメガネがとてもよく似合う。
 (つむぐ)と呼ばれているその青年は手に着物のような布を持っていた。

「……もしかして、僕と同じ新入生?」
 
「あ、え、えっと……」
 
 人と話すことが苦手な文乃は言葉に詰まる。
 
 そうです。と返せばいいだけなのに、同級生だと思うと余計に上手く話せなかった。

 
「紡様と同じく、入学された京極文乃様でございます。」
 
 
 文乃の戸惑いに気づいた安西はさりげなくフォローしてくれる。
 
「……ふーん?京極さんはなんの才能——」
 
「紡様」

 安西は紡の言葉を遮り、深々と頭を下げた。
 
「どうぞ、才能の詮索(せんさく)はご容赦(ようしゃ)ください。」
 
「……あぁ、それがステラのルールだったね。ごめんよ」
 
 紡は申し訳ないと片手を上げて文乃に謝る。

「じゃあ僕はもういくよ、仕上げないといけないものがあるから。京極さん、またね」

 そう言い残し、彼は階段の上へと去っていった。
 さっきの会話の内容からステラ内でも何かルールがあるのかと悟る。
< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop