同居人がめんどくさい
「はーい。」

私も手を振りかえし、急いで車の方に駆けていく。

「やあ、こんにちは。」

車に乗り込むと、運転席に座っていた旦那さんの陣(じん)さんがこちらを振り返って微笑んだ。

「あ、陣さんも!こんにちは。」

てっきり亜紀さんだけかと思っていた。

亜紀さんが助手席に乗り込み、私が後部座席に座った。

そして、私の隣には、泣きべそをかいている男の子が座っている。

「ほら、ナツ!なんて言うの?」

助手席から後ろを振り返り、亜紀さんが男の子に言う。

「...」

けれど、ナツ君はさっきまで泣いていたのだろう、未だしゃくりあげるその乱れた呼吸を整えることに必死のようだ。

ギュッとぬいぐるみを抱きしめて、ぬいぐるみに隠れるように、こちらから顔を背けた。

「まったく...ごめんね〜、香恋ちゃん。」

その様子を見て、亜紀さんがため息混じりにそう言う。

「全然、大丈夫です。」

そう言いながら、チラッと隣を見てみるけれど、ぬいぐるみのガードでその表情はまったくわからない。

「じゃあ、行くよ〜。」

陣さんの穏やかな声が車内に響く。

その声と共に、緩やかに車が発進した。
< 21 / 43 >

この作品をシェア

pagetop