ひまわりが咲く場所で

どうか もう奪わないで

by瑠唯

救急車のサイレンの音が、遠くから近づいてくる。

その音が聞こえるたびに、俺の心臓は締め付けられるように痛んだ。

運ばれていく莉緒の小さな手を、俺はただ握り返すことしかできなかった。意識が朦朧としている莉緒は、苦しそうな呼吸を繰り返しながら、うわごとのように俺の名前を呼んでいる。

「るい、くん……」

「ここにいる。ここにいるから、莉緒」

病院の廊下。独特の消毒液の匂いと、行き交う足音が、あの頃の記憶を容赦なく呼び覚ます。
お姉ちゃんが最後にいた場所。俺から大切な人を奪い去った、あの白い世界。

(神様がいるなら、教えてくれよ)

俺は待合室の椅子に深く座り込み、頭を抱えた。
せっかく見つけたんだ。あのひまわり畑で、俺に笑いかけてくれた初恋の女の子。

もう誰も近くに置かないと決めていた俺の心を、その眩しい笑顔でこじ開けてくれた、かけがえのない存在。

(どうして、いつも俺の大切なものばかり壊そうとするんだ)

お姉ちゃんを連れていっただけじゃ足りないのか。

今度は莉緒まで連れていこうとするのか。

「頼むから……もう、俺から奪わないでくれ……

誰に届くともつかない祈りが、自分の口から掠れた声となって漏れる。

握りしめた拳が、怒りと恐怖で激しく震えていた。
しばらくして、処置室の扉が開き、医師が出てくる。その神妙な面持ちを見た瞬間、俺の全身の血が凍りついたような気がした。

「相葉くん……だね。川上さんのご両親にも今、お電話がつながったところなんだけど……」

医師の口から告げられた言葉は、俺の最悪な予感を、残酷な現実へと変えるものだった。
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